だから、ちょうだい

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 室内に響いた私の声が消えても、スズリは何も言わなかった。かわりに首を大きく傾げ、ぐぐぐ、と90度まで曲げながらもその瞳は真っ直ぐこちらを映したままぴくりとも動かない。 「……きら、い?」  秦くんと同じ唇同じ声で発せられたそのひと言はぽつり、落ちてなくなった。その後小さく俯いたスズリが、綺麗に整えられている髪の毛をぐしゃりと掴んで掻きむしる。 「キライ……わざわざ女の子って嘘ついて会いに行ったのに、嫌い? おかしいよ、おかしい。だってそうでしょ? 異性として見てるから嘘ついて会いに行ったんでしょ? 嫌いなわけないよ嫌いじゃない」  早口で呟いた独り言のようなそれは、私に言っているというより自分自身に言い聞かせているみたい。執拗に頭を掻いたあとで、乱れた前髪が闇に堕ちた瞳を覆い隠す。  そうなれば必然的に注目の集まる唇は薄らと右端だけを上げ、漏れでる感情がぴくりと頬を痙攣させていた。 「ああ……足りないのか。もっとカナミの"好き"を集めなきゃいけなかったんだ…」  言うと、自身が身に纏っていた衣服をぶちぶちと力づくで破いていくスズリは、上半身が露わになるとそこでようやく手を止めた。
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