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「(……ん、?)」
柔らかい。そしてほんのり甘い香りもする。
次に思うのは彼女の唇を彩っていたリップのぺっとりとした密着感。
体感にして30秒、その状態で留まった私たちはこの光景だけ見たら完全にあれだ、百合カップルだ。
衝撃のあまり固まってしまった私はぴくりとも動けず、今後の展開を彼女に委ねていることに気がついて咄嗟にその肩をがっちり掴む。
「……なに?」
制止された意味が理解できていないように問う美少女がそこにはいて、疑問を抱いた私がおかしいみたい。
「いや、何って……は?」
戸惑い苦笑を浮かべていたら、彼女は不可解そうに眉間に皺を寄せ目を細めてみせる。どう考えてもその表情は私のものだ。なのに彼女ときたら、迷いが全く見られない。
「カナミも、すきでしょう」
「す、好きって何」
「このカタチ、カワイイんでしょ?」
どこかカタコトの日本語に気を取られながら、なおも距離を詰めてくる彼女から2度目のキスが降りかかる。どこか感情のこもらないそれはいやらしさが微塵もなく、ただ唇が触れ合っているだけ。
だからといって黙って受け入れるわけにもいかず、華奢な肩をもう一度強く押せば「どうしたの」と覗き込むその顔が憎らしいくらい整っている。
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