妙な夢

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妙な夢

…… 確か、いつも通りの夜だった。 その日も俺は破天荒な転校生の件で器物損害やら制裁問題の処理に終われ、時刻は20時を過ぎる頃にやっとパソコンのブルーライトとおさらばした。 頭痛はもはや体調不良には入らない。酷く痛む頭の中ツカツカと無心に男子寮へ突き進みながら確信付いた事だ 特にその日は疲れていたんだ。 これは決して、後に語る妙な夢の言い訳ではなく、本当に。 とにかく気怠く感じるその体をずっしりとベットへ沈ませ、ようやく深い眠りにつけると目を伏せた。 奇妙なほど鮮明に覚えている、あの夢の景色 真っ黒い暗闇の中に1人たたされていたが、決して自分の姿さえ見えない、と言うことはなかった。 ようは漫画でよく見る意識の中みたいなものだ。まさか自分にもこの体験ができるだなんて思わなかったが。 まずは今一度思い出してみる。 ______________ ______…… 気がついたら暗闇にいた。 恐らくここは夢なのだろう、と直感的に察してしまったのは何故か。 今までの人生で一度も夢とは認識できなかったはずなのに、今はしかと分かる。 慣れぬ真っ黒の視界、夢の中だからか妙に冷静な心持ちで瞬きを繰り返していた すると突然耳元に、いやおそらくその空間全体に、何者かの声がこだまする 『鳳条…』 「、っ!」 『鳳条、智……』 鳳条(ほうじょう)(さとる)。 俺の姓名だ。 声のみの情報源、俺は極力周囲の音に耳を立たせ、暫くたってから声を出した 「誰だ。お前」 『私は美保子(みほこ)。』 至って普通の名前だな。といえば実際の美保子に失礼だが。 「…ここは何処だ?……いや、待て」 「この夢の仕組みを教えろ。」 所詮夢。真面目に聞いたり事情を聞こうとしたところで、それは自分の中の妄想に過ぎないはずだ。 というか、内心そう信じたかった自分も居たのだ。 やけに高圧的な態度になってしまったがまぁいい。これは学園の生徒達にも同様だからな 『…仕組み?そうね……』 『わたし、を用意したの。とびっきりの』 「……舞台、?」 『そう。とある森の奥深く、良家の息子や御曹司、財閥のご子息まで通う全寮制の男子校。』 『ある日その名門学園の理事長の愛孫である転校生は、あまりにその麗しく愛らしい美貌を隠すためにわざと変装させられ、学園に迷い込む。』 「……゛」 何だ?急に…… この美保子とか言うやつ、説明をここぞとばかりに早口で話し始め… もう良い、とりあえず聞いているか。 『ここ私立煌明学園(しりつこうめいがくえん)は偏差値が高く優秀な生徒も多いものの、性欲旺盛かつ愛に飢えた男たちで溢れかえっていた。そしてやがて矛先が、探し求めた女性からかつての仲間へと向いていく』 「気持ち悪いな。」 『うるさいわ。』 「…………」 『拗らせ枯れ果ててしまった彼らに、まるで一滴の甘美な水の如く、その転校生は次々男たちを落としていくの』 「……はぁ?はは。」 「そりゃ面白い童話だ。けど生憎こっちの煌明学園の転校生とやら、潤いどころか乾燥を越して荒らしに来てるんだが?」 『そう。私が言いたかったことはそれ』 『……折角完璧なを用意したのに…!』 『転校生に異変が生じたのよ。まさかあんな風に動くなんて……』 「待て。説明しろ、まるで俺たちの過ごしてた現実全てが作り話みたいな言い草してるな。」 『ええ。そうよ』 「そうよ……??」 『世界中の″らしい″男達をこの学園にかき寄せたわ。貴方もそう。』 『転生じゃないだけ良いでしょう?無理矢理やらされた役じゃないんだから。』 「……」 とりあえず意味がわからなかったが、こんな訳の分からない夢、これからの生涯で一度も経験出来ないかもしれない 一先ず湧き上がる疑念を投げかける。 「別に俺自身が普通に過ごしていて問題ないなら良い。が、転校生に異変があって、何が困る?普通他の″演者″である俺に対してわざわざ干渉、しかも簡単に世界の仕組みを暴露、だ? ……何か俺に面倒なことをやらせるつもりだな ?」 人生で初めて頭が良くてよかったと思えた。 いや割とあったかもしれない、嘘だ。女子に持て囃されるのはかなりウハウハだった。 『話が早いわね、その通り。』 『残念ながら今の転校生じゃ皆んな好いてくれない。他の生徒会メンバーは違うようだけれど、私は生徒会長とが良いのよ。そこで思いついたわ、もう他の人を当て嵌めちゃえば良いじゃない?』 『貴方には“転校生に頭を痛める生徒会長を心配し、受け入れて愛す風紀委員長″をして欲しい。』 「断る」 『あら聞こえなかったわ。もう一度言って』 「絶対に断る。無理だ」 そもそも夢の話だ。こんなの有り得ない 有り得るわけ、ない。 『あら良いの?』 『あなた、このまま生徒会長のライバルに居たら殺されるわよ。』 「……は?」 『″転校生を好きなあまり彼に手を出した鳳条、大切な転校生に手を出された生徒会長は己の権力を最大限に使い委員長を始末する″』 『舞台のシナリオには必ずの決定事項がある。それは“会長がいずれ転校生を好きになること“と、今私が読み上げたイベント。』 「…………はあ、?」 『でもアンチ転校生受けだなんて、誰も見たくないに決まってる。』 『そこで鳳条智。あなたは生徒会長___黒崎 慎一郎(くろさき しんいちろう)を惚れさせなければならない。 じゃなきゃ、死ぬわ。』
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