妙な夢

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回想は終わり、と。 ………なんとなく分かっただろうか。 つまりこの学園の面子自体偶然集まってできたのではなく、美保子という人物が作り出した舞台であること。 には「いずれ生徒会長が転校生に惚れる」のと「ライバルである風紀委員長が制裁を下される」という2つのイベントが決定事項で決められている。 俺はそれを回避するべく、会長が惚れる前に略奪せよと。 ふむ、うん、なるほど…… わからんな……………… 地頭の良さが妙に発揮してしまったのか夢の内容をこうも完壁にまとめてしまうとは。 それに加え彼女のセリフも本当の事だとしたら何だかんだ転校生の異常性に合点がいってしまうので不満だ 胸にふつふつ立ち込める不安感を誤魔化すように目の前のコーヒーを綴る。 焦げ茶のシンプルなデザインをした机はやはり上等な素材を使っているからか点灯によく反射してテカテカ光っていた。 まぁ、何度も言うが夢の中の話じゃないか。 それに改めて考えるとこの内容はさすがに非現実的すぎる。せめて思い切って仮想現実などと言い張られれば少しは考えた 事実、昨日の夢でも十分考えたには考えたが。 ……きっと大丈夫だ。淡々と仕事をこなしていけば… まずは北校舎裏の強姦事件についてか。 長い作業に取り掛かるため、再び目の前のコーヒーを綴ろうと腕を上げる。 縁に唇を付けた所で、突如ガタン!と乱暴な音が響いた 特に驚きもしなかったので、その音の在処 勢いよく開いた扉の向こうへ視線だけを送る 「よぉ、鳳条。」 目を向けた先に映るのは思わず顔を顰めたくなるほど長い脚……ではなく、そうだ顔を見なければ。 今度こそ顔を上げた先に見えたのは、端正な顔立ちをした黒髪ショートの男だ 特にヘアセットもしていなく、無造作に下ろされている。寧ろその髪型だからこそウケがいいのかも知れない 何せ偉そうに赤眼を細めたこの男こそ、此処(煌明)を仕切る生徒会長__黒崎慎一郎なのだから。 まずい気まずすぎるな…… いかんせん風紀委員長である俺と黒崎の関係性などまさに天敵同士。自分で言うのもアレだが、権力者故の張り合いやら対立やらだ。 煌明学園は主に幼稚園から小中まで附属校が付いている。大体はエスカレーター性という事だ。 即ち、自然にその煌明で育った学生達というのは当たり前に幼稚園からの幼馴染が出来る訳だ。 そしてそんな俺も例外ではなく、寧ろこの目の前に立つ男とは中学からそれなりに友人関係を築いていたはずだ 何故この立場になってから敵対し出したのか。別に俺はあの関係のままで良かったんだが。 ……というか欲を言うなら友人同士のままの方が気楽だし態々言い合わなくて済む。コイツに対してのライバル心などはとうに持ち合わせていない。普通に勝てないから。 そんな元より気まずい関係にある黒崎を、惚れさせろと? 無理がある。やはりあの件はただの夢と考えた方が良さそうだ コーヒーを綴ったまま黙り込む俺に痺れを切らしたのか、軽く舌を打ちながら黒髪を掻く 「……チッ、だんまりか」 「せめて挨拶ぐらいは返さないとな?てめえのその腕章、矛盾を通り越して皮肉だな。」 チラ、と横目で指摘された腕章を見下ろす。 コーヒーを持つ右腕には青の背景に白で風紀委員会と書かれた腕章が巻かれてある。なるほどいつもの風紀イジりか。 コイツ俺の返事が遅いからって毎度まくし立ててくるな。未読無視とか嫌いだろ、追いLI○Eするタイプだろお前。 流石に口をつけたままだと不格好だな、とカップを机の端へゆっくり置き、肘を机上へ付いて手を組む。所謂ゲンドウポーズである 「あの多忙な生徒会長は、仕事中の合間休憩すらご存知ないのか。すまないな、お前は″特に″挟むべき人間だと思ってうっかり説明を忘れていた。」 ピク、と顰められている形の良い片眉が上がる。見下すようにこちらを眺めた赤が更に敵意を持ったように深まった、気がした
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