あつめる、あつめる。

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あつめる、あつめる。

「夏といったら、やっぱりホラーでしょうよ!怪談怪談怪談怪談、レッツ怪談!」  私達の高校の新聞部部長、柿沼涼香(かきぬますずか)。彼女がそれを言い出した時、私達部員が思ったことは“また始まったか”、だった。  行動力の塊。突発的な考えで部員を振り回すことで有名な彼女は、どうやら今回も突然の思い付きをしてしまったらしい。 「えっと、話が一切見えないんですが?」  私はノートパソコンから顔を上げて尋ねた。 「部長、いつも唐突に結論だけ言い出すからわけわかりませんです。簡潔に、わかりやすく流れを説明してください」 「新聞部のネタがねえ!締め切り近くてやばい!夏休み近いし季節的には夏っぽい企画したい!そういえば夏といえば怪談でしょ!怪談特集やりたい!イマココ!!」 「……わかりやすい説明どうも」  なんだその、古の大型掲示板のような構文は。  とはいえ、今回の思い付きはまだ“マトモ”な方だ。去年の文化祭の準備中、唐突に“古のメイド喫茶を復活させたいので男子全員女装させるから覚悟しろ”と言いだした時は、本当にどうしたものかと思ったものだが。  確かに、夏の企画として怪談や都市伝説を扱うのはベターである。  二年生の私は去年からこの新聞部の活動に従事しているわけだが、少なくとも去年は怖い話特集という方向に行った記憶がなかった。その当時の部長の意向で、夏のプール特集という実に爽やかなものが採用されたはずである。若干、涼香は退屈そうだったが。 「怪談といっても、なんかネタあるんですかあ?」  男子の一年生部員が、あくびをしながら言った。 「うちの学校、七不思議とか全然聞かないんすけどー。かといって、学校と無関係の怪談って、学校の新聞で取り扱ってもなんだかなーっていう。遠い遠い、北海道とかにあるホラースポットとか紹介してもみんな興味持てないだろうし?」  それは間違いない。  私もホラーはそこそこ好きなので怪談とかおまじないの話は友達とするが、この学校に纏わる怖い話というのはほとんど聞いたことはない。  そもそもこの高校が比較的新設校で創立から六年くらいしか過ぎていないので、ダレダレが死んだだのトラブルがあっただのという怪談も作りにくいのだろうが。 「それが、一ついいのを聞いたのよ!」  しかし、どうやらネタそのものは涼香が自ら見つけてきていたらしい。にんまり笑って、私達に話してくれたのだった。 「四階の資料室にね……オバケがいるっていうの!」
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