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お互い軽く頭をさげて終わればよかったものの、綾人のことを考えていた俊は、彼が気になり無意識に思わず見つめてしまっていた。合わせて、ちょうど俊がこれからトイレに入る人、綾人が出てくる人であったため、立ち位置が綾人の足を俊の方へと向かわせる。
綾人「あ、さっきはどうも」
俊:「あ、はい」
綾人「直央斗のやつ、大丈夫でしたか?」
俊:「はい?」
綾人「アイツ、俺と一緒に俺ん家から来たのに、会場に着いてさっきの連中と合流した途端、『ちょっと忘れ物したから先に伊藤くんたちと行っててー』っていったん帰っちゃって。だから心配してたんですよ」
俊:「………」
綾人の言葉を聞いた瞬間、俊は自分の中で言葉では表現できない『何か』が起こったのを感じた。そして悟った。直央斗と二人でここに来る前に、直央斗が『何をしていたか』を理解した。
綾人:「あ、あの………」
俊:「あ、はい?」
綾人:「大丈夫ですか?」
俊:「ああ、はい………」
綾人:「ならよかった。ところで直央斗のヤツもう帰りましたか? 来夢たち、あ、中学のヤツら来てたんで写真撮ろうと思って」
俊:「あ………すいません。俺も知らなくて」
綾人:「え?アイツ、帰っちゃったんだ」
俊:「………」
綾人:「あ、いえ全然。ただ俺の知ってる直央斗って優しいから。友達おいていきなり帰っちゃうって珍しいなって思って……まあ、なんかあったんでしょ。アイツそういうの言わないときあるし。あ、ありがとうございます。教えてくれて」
俊:「あ、いえ………」
「じゃあ」と言って綾人がそのまま去っていくのと同時に、俊もトイレに入る番がまわってきた。用を済ませ、洗面台の蛇口のセンサーに無意識に手をかざす。
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