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蛇口から水が流れている。正装であることも考えず、俊はトイレの洗面台の蛇口から両手で水をすくうと、それをそのまま一気にすべて自分の顔面にぶちまけた。
俊:「ああ…」
顔をおさえた手が無気力に落ちる。シャツとジャケットの上の方がビチャビチャになり、髪の毛からは水が滴っている。誰も何も言わなかったが、トイレの中にいた人々の人の視線が彼に集まり、一瞬ざわついていた。
俊:「俺ってクソだわ……」
「あ、相原!また話そう!」そう言っての知人と会釈をしたり、軽く挨拶をする直央斗。
会場の入り口付近で俊を待っていた彼はスマホをいじりながら周囲を見ていた。立て看板で記念撮影をしている人もいれば、昔の話をしているグループもあり、みんなどこか楽しそうだ。そこへ会場内からこちらへ向かって歩いてくる俊を見つけ、軽く手を上げる。
直央斗:「ああ、来た。トイレど………どうしたの!?それ!」
俊:「ああ、いや…いんだ。待たせて悪りぃ」
直央斗:「え?あ、うん…じゃあ帰ろうか」
俊:「………なぁ」
直央斗:「うん?」
俊:「この後、お前なんか予定あんの?」
直央斗:「特にはないよ」
俊:「………ならあそこ行かね?川んとこ」
直央斗:「え?いや、だって、おばさんところで記念写真撮るって」
俊:「……いいよ。そんなん後で」
直央斗:「え、でも………分かった。まだお昼前だし、せっかく久しぶり会ったしね。なら行こっか」
俊:「………おぅ」
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