我 / 僕 × 在雪景中 / 雪花の中で

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翌日の成人式当日。天気は晴れていたが、気温が低く、着ぶくれしているが多い。とはいえ、料理店の窓からは時折(ときおり)その着ぶくれしている人の中に、振袖(ふりそで)姿の女性も見える。 俊:「来ない…もう来んのか…ホント来んのか…来ない…」 「なんでこんなギリギリの時間なんだよ………」そう思いながら俊はスマホで時間を確認した。成人式が開始されるのは10:30からなのだが、俊の家から式典の会場までは歩いて10分ほどなので、どれだけ遅くても10:20分までには出なければ間に合わない、しかし……… 俊: 「もう10時19分………アイツ、ギリギリじゃん」 普段から早く行っても行けば誰かしらいるような環境で、そして時間に(きび)しい世界で育ってきた俊には許しがたい行為だった。その時ピンポーン!と軽快(けいかい)にチャイムの音が鳴る。 「おっ!」とやっと来たと思いながら俊が中華料理店側の方のドアを開けると、そこにはスーツ姿で、ロングコートに身を包んだ直央斗が、ハァハァと息を切らしながら立っていた。 「おぅ!超久しぶり!うぃー…」と手を出す俊。そんな俊を尻目(しりめ)に直央斗は(あら)い息をしながら「あ…うん…久しぶりだね…行こっか」と言ってそのまま行ってしまった。 ………あとには伸ばした俊の手だけが残った。 「………お、おう」悶々(もんもん)とした気分になりながらも直央斗を追いかけ俊も出発。 俊: 「元気だったか?」 直央斗:「ああ?うん。ちょっと走ってきたから…疲れちゃって」 俊:「そんなに?いや、ウチまで1, 2分の距離じゃね?」 直央斗:「え、あ?そう…いや、ちょっとランニング。うん。いい(あせ)かいてきた」 俊:「いや、そのカッコでランニングしてきたの?え?どゆこと?」 直央斗: 「色々事情あって………」 「え?…いや、どゆこと?」と思いながらも、なんだかこれ以上聞いてはいけないような気がした俊はそれ以上質問するのをやめた。途端、会話もなくなり無言になる二人。
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