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「ぐすん……うぅ……。宿題しなきゃ」
ー ぐっ!
少し落ち着きを取り戻した生明の背中を元気づけるように“何か”はトントンと叩くと、手を引いて立ち上がらせる。
薄暗い家を引かれる手を頼りに歩むと、自分の部屋の前に辿り着いた。
「案内してくれてありがとう」
そのまま導かれるように部屋に入ると、静かに扉が締められる。
電気の着いた部屋からは、しばらくの間、レポート作成に励む音が聞こえていた。
レポートを終えて、翌日の準備を終えた生明は大きく伸びをすると、指先にサラリとした感触が触れる。
見えないが、それが何なのか生明は理解していた。
「ハーちゃん。そろそろ、私限界かも」
空虚に向かって話しかける。正確には背後に立って見守っていた存在に向けて話しかけていた。
「“二人”に相談しようと思うんだ」
カレンダーを見ればもうすぐ十二月に入ろうかという頃。年末になれば、皆色々と忙しくなり簡単に会うことも難しくなるだろう。
特に相談相手として選んだ二人は、引く手数多のお人好したち。
すでに予定が埋まることも考えられた。
「ハーちゃん、いいかな?」
ー なでりなでり
生明の問いに答えるように、“見えない何か”は見上げた生明の頭を優しく撫でるのだった。
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