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2 公爵令嬢と婚約事情
実は内々の者しか知らされてはいないが公爵家はこの婚約自体に当初から難色を示していた。
所が優秀なリアーヌを手に入れたいが故なのか『そこをなんとか!』と王家側が頼み込んだ形で成立した婚約だ。
公爵家側がいうならば王家のお願いを聞いてやった立場であって、当然だが両家の間には諸々の制約や取り決めた内容に違反をした時の罰金等が契約書として神殿に保管されている。
但し公爵家側がかなり有利な条件となっているのは否めない。
そう
リアーヌと王子は王命で婚約した訳では無く、昔からの友人であり親族でもある国王陛下と王妃殿下に頼まれ断りきれなかった公爵家当主つまり、リアーヌの父の不手際で結ばれたものなのだ。
リアーヌ自身は今だにハロルド王子との婚約を白紙に戻せるのなら両手を上げ、満場一致で可決する気満々である。
理由は単純。
当の本人、リアーヌが王子との婚姻を嫌がっているからである。
×××
王子と大勢の婚約者候補との顔合わせの茶会席が設けられた時に彼女も当然出席したが。
「年下男子なんて嫌ですわ。私の理想は宰相様ですもの」
と。
当時アラサーだった宰相が好みだと茶会の後で両親に言い切って、頭を抱えさせたのは8歳の時の逸話である。
そう彼女は年上の男性が好み、というより枯れ専に近い嗜好の持ち主として元々両親に認知されていたのである。
本物の王子に会えば考えも変わるかと思いきや、年下は嫌だという意識が余計強固になっただけに終わった。
「宰相様のあの、ちょっとやる気のない疲れた感じが素敵なのですわ♡ 若い男の子のあざと可愛いさとか傲慢さとかが枯れちゃって程よく無くなった、あの漂うような渋い色気が・・・」
茶会の始まりに顔を出しただけの宰相を見て何かが心に刺さったらしく、延々と年上男性の魅力を垂れ流された両親は、だめだこりゃと匙を投げざるを得なかったらしい。
但しコレは公爵家の超極秘情報であり、何故コンフォート家が王家との縁をあれ程まで渋り、婚約の打診を延々とはぐらかされていたのかは、周り――王家も含め――は知らされていない。
当然王子殿下もこの情報は脳内インプットしておらず、ていうか、王家のゴリ押しで自分とリアーヌ嬢の婚約が成立した事も実は知らされていなかった。
ただひたすら『優秀な彼女を婚約者として大切にしなさい』と両陛下に言い聞かされているだけに過ぎなかったりするのをリアーヌ自身がよく知っている。
そうじゃなければ、もうちょっとリアーヌに対して王子が気を使った態度を見せるはずだし、『距離を置こう』等という世迷言は口にしないだろう。
そんな訳で彼女はお茶会の席を実にいい笑顔で大人しく自身の侍女と共に退出し、コンフォート公爵家の家紋付き馬車の中でほくそ笑みながら、ついでに侍女のマーサに呆れ顔をされながら公爵家のタウンハウスへと帰って行ったのである。
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