3 公爵令嬢は転生者 

1/1
前へ
/50ページ
次へ

3 公爵令嬢は転生者 

 城から帰り、使用人達から恭しいお出迎えを受けつつ優雅に自室に足を踏み入れた途端・・・ 「いやった~~~~ッ! キタコレ、婚約白紙案件だわッ!」  思わず浮かれまくってベッドにドレス姿のままダイブするリアーヌ。 「王子ったらヒロインちゃんが気になっちゃって大変よねえ~~ ウフフフ・・・」  ニヤニヤ笑いながら、彼女は何もない筈の目の前の空間を右手で払う――と、そこにはステータスウィンドウが現れる。  そう。  お気づきだろうが彼女は転生者である。  生前はれっきとしたOL。  社畜仕様でもなんでも無く、福利厚生が整った会社で残業代もきちんともらいながらお一人様生活を謳歌し、休日には乙女ゲームやWEB小説や漫画を嗜む独身貴族だった。  勿論だがアラサー女子で、8歳当時には既に前世の記憶があった彼女の男性の好みが渋オジだったのは当たり前である。  周りはみんなガキンチョなので恋愛対象になんぞなりゃあしないのだ。  俗に言うトラ転で生まれ変わった。  要は歩きスマホゲーが災いしたのだが、その辺りの黒歴史にはあっさり蓋をする事にしてこの世界を前向きに生きようと決めたのが3歳の時である。  で。  自分がいくつかプレイしていたゲームの中に似たような世界観に生まれ変わったんだな~・・・ と思いながら、ある日よくよく鏡を見たら・・・ 『あら、悪役令嬢じゃん』  と。  まぁ10歳の時に気がついた訳だ。 ×××  彼女の転生者特典は、ステータス画面と言語同時通訳機能、速読+学習能力+記憶力強化そして全属性魔法使用可能という便利なモノだった。  幼心・・・ ではなく身体は子供だが、中身はアラサー女子の彼女は、ステータスの伸び方が面白すぎてあらゆる学びを網羅した。  そりゃあもう本気で。  公爵家内の図書館で舐めるように本を読みまくり、読む本がなくなったら王宮図書館にまでせっせと足を運んだ―― 主に父親のコネを使いまくって。  実に迂闊である。  未成年、しかもどう見ても学童年齢の子供が父親に強請って王宮の禁忌図書なんかに入って子難しい本を読み込んでしまうのだ。  そんなの目立つに決まっている。  そのせいだろうが、気が付くと他の婚約者候補達と共にハロルド王子とのお茶会も4回目も過ぎる頃にはもう既に『神童』と貴族達に噂されてしまっていて、自分が悪役令嬢だということに気がついた10歳直前に王家のゴリ押しに父公爵が負けてしまって、王子との婚約が成立していたのである。  これまた黒歴史案件である。  もう少し早く気がついていればと今更ながら悔やまれるが、ひょっとすると婚約者に決まった事で『悪役令嬢だった』記憶が蘇った可能性は無きにしもあらずである。  ×××  「あ、レイにこの事を連絡しなくちゃ・・・」  ガバリと身を起こして呟いた途端、何故か部屋内で返事があった。 「リアーヌ、呼んだか?」  彼女が転がるベッドの直ぐ側に設置されたシューズロングソファーの背もたれの向こうから、聞こえた返事はいい感じのバリトンボイス。 「・・・なんで居るのよ、淑女の部屋に」  ひょっこり出した顔を見て、つい眉根を寄せて半目になってしまうリアーヌ嬢。 「え、そろそろだから? リアが卒業したら入れ替わりにヒロインが王子に付き纏うんだろ?」  
/50ページ

最初のコメントを投稿しよう!

152人が本棚に入れています
本棚に追加