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6 レイモンド・フラメア侯爵子息②〜過去
禁忌書庫の閲覧用テーブルに古書を広げてその緑の瞳を輝かせて読み耽っている御伽噺に出てくる妖精のような美しい女性にレイモンドはギョッとした。
魔導ランプの光に照らされた髪はまるでシルクの糸のような白金色。
それが豪奢な流れを作り彼女の薔薇色の頬に烟るように掛かっていて、まるで花嫁のベールのようだ。
うっすら嬉しそうに上がった口角に繋がるふっくらとした唇は薄紅色をしていて艷やかだった。
新緑の様な瞳は、王宮魔法使いでさえ難解な筈の本に書かれた文字を確実に追っているのが見て取れ、彼女の知性の高さを物語っていた。
『うわぁ、ひょっとして人外か?』
思わず彼女の姿を頭の上から足先までよく確認し直して、先程感じた第一印象より何だか幼いような気がしたレイモンドは首を捻った。
『んン? ひょっとして子供か?』
資料を持ったまま立ち竦んでいると、ふと少女が此方を向いて
「あ。攻略対象? しかも裏ルートの・・・ フラメア侯爵子息だっけ」
とその薄紅色の唇から奇っ怪な台詞が紡がれたのである・・・
「え? 攻略対象? 裏ルートって、え? この国ってそんな言い回しの言葉あるっけ? ゲームじゃあるまいし。しかも俺の事知ってるの君?」
と。
思わず聞き返し、自分を指差してしまう侯爵子息。
「あ。しまった・・・って、意味がわかってるって事? ん? ん?」
きょと~ん、としたその顔はやっぱり可愛らしい子供だなと思ったレイモンドである。
×××
彼女と軽く話してみれば、実はフラメア侯爵邸の敷地の向こう側にある、広大な敷地の主であるコンフォート公爵の長女なのだという。
「え? じゃあ王子殿下の婚約者の御令嬢って事?」
「えぇまぁ、不本意ながら」
「え、不本意なの?」
「はい。年下はストライクゾーン外なので・・・って、分かんないか」
「・・・ひょっとして君、転生者なの?」
「え? そ、そ、そん・・・」
「あ、俺転生者だから。
多分生前は日本人」
そう言ったレイモンドの両手をガシッと握るリアーヌ嬢。
「私も同郷です」
「あ、やっぱり」
「失礼かもしれませんが、家がお隣りとは知りませんでした」
「俺は知ってた。お隣のお嬢さんが王子の婚約者だって事くらいはね。
年が違いすぎてて交流は無かったけど。
僕らの両親はお互いに知り合いではあるよ」
そう言って肩を竦めたレイモンドは、
「じゃさあ、今度『裏ルート』の意味を教えてくれるかな?
気になるからさあ」
「勿論ですともっ!」
フンスと硬い握り拳を作るご令嬢を横目に見ながら、見た目とのギャップがあり過ぎでおもしれえ~~ と、その時レイモンドが思ったのは内緒である。
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