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7 レイモンド・フラメア侯爵子息③〜過去
翌々日の公休日。
レイモンドは前日に正式な先触れの書簡を送り、花束と菓子を携えて公爵邸の応接間でリアーヌと握手を交わしていた。
それまで面識がなかった二人だが図書館で魔法談義で意気投合したという嘘っぱちを互いの両親に告げることで辻褄合わせをして無事今日の運びとなり、つい先刻まで公爵夫妻も同席していた。
リアーヌの専属侍女と自分に着いてきた侍従には離れて貰うが、ドアは思い切り大全開。
ご近所さんとはいえリアーヌは王子の婚約者だ。
まだまだ10歳と彼女自身幼いとはいえ、余計な噂が出ないようにするための大人な配慮は欠かせない。
配慮と言えば、会話は極力分からないように消音魔法と認識阻害魔法を同時発動させ会話内容を違うものとして使用人に認識させるという念の入れよう・・・を、レイモンドがサラッとやってのけたのを知ってリアーヌは腰が抜けそうなほど驚いた。
複合魔法は王宮魔法使いでも同時発動させるのは筆頭魔法使いくらいなので・・・
その際
『宝の持ち腐れだ・・・』
と、リアーヌが呟いたのをレイモンドは完璧に無視をしたが。
×××
「つまり、君、中身はアラサーなの? え、その体って10歳だよね。しんどくないの?」
飲んでいた紅茶を上品な所作でソーサーに戻すレイモンドを流石は大人だなー、と感心するリアーヌ。
「まぁ慣れました。
生前プレイしたことのあるゲームに酷似した世界だと気が付いたのはごく最近ですが」
「酷似?」
「ええ。丸々同じではありません。
そもそも私自身王子に対しての好感度はあまり高くないですから」
「そういやそんなこと言ってたね」
「ええ。ヤキモチを焼いた私がヒロインを虐めて婚約破棄をされるっていう役どころ、つまり私は悪役令嬢ですね」
「好きじゃないのにヤキモチって無理くない?」
「ですです。そんな感じで全く同じじゃないんです。
レイモンド様も王宮魔法使いではなく文官様ですし。
魔力はありそうですけど、隠してるんでしょ?」
「あ。バレてる?」
「ええ。ステータス画面の項目に相手の能力を知ることの出来る探査魔法が増えたんで試して見たら、レイモンド様は魔力が魔法士並みにあることになってましたから」
「え、ステータス画面て?」
「あ、こうやるとでてきますよ。
転生者特典ぽいので、多分レイモンド様も観れるのでは?」
リアーヌは彼女の目の前の空間を右手で払うように動かした。
「?」
彼女がやってみせた通り手を動かしても何も出てこないので首を傾げるレイモンド。
「ああ。そこにあるって意識しないと駄目みたいですよ」
「成る程。思い込みか」
言われた通りに意識しながら右手で空間を払うと四角い薄い板のような形で光りが点滅し、
『ステータス更新。ダウンロード中・・・』
という文字が浮かんだ。
「え、なんだコレ?」
「どうしました?」
「ステータス更新ダウンロード中ってなったんだけど・・・」
「あ~、今まで1度もウィンドウ開いてないから初期ステータスが変化しちゃって、書き換え中なんじゃないかな。
たまに私も出ますけど1分くらいですね。
ただ今まで1度も開いてないとなると時間が結構掛かるかも・・・」
「マジカ」
×××
「じゃあさ、俺ってゲーム上では魔法使いなの?」
ダウンロードに時間が掛かりそうなので、色々とゲームの事を聞いてみた。
「ええ。王宮魔法使いですね。
無属性魔法が得意で魔法使いの筆頭でした」
「うーわ、かったるい・・・」
「ご両親の猛反対を振り切って、勘当同然で魔術師に・・・ って感じでは無さそうですね」
「うん。オヤジとジジイをコテンパンに剣でノシて、母親とバーさんと伯母を味方につけて文官になった」
全然違いますねえ~・・・と彼女の目が泳いだ。
中身アラサーって聞いてたけど、この子中身も可愛いよな?
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