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8 公爵令嬢と幼馴染
「あれ以来の仲よね~。コレって幼馴染っていうのかしら?」
ニコニコと笑うリアーヌの顔を見ながら、ウ~ンと考えるレイモンド。
「お前は10歳でまだまだ子供だったけどな、俺は成人してたからそういうの幼馴染でいいのかな?」
「・・・ご近所さん?」
「近所の憧れのお兄さん」
ニヤニヤ笑いになって、リアーヌの鼻先に指先を伸ばしてムギュッと摘むレイモンド。
「なぁッ! 誰が憧れのお兄さんッ?! この女タラシ!」
思わず触れられた鼻を両手で隠して顔を赤くするリアーヌ。
「仕方ないだろ。仕事なんだから」
彼は溜息を吐きながら肩を竦めると、ソファーに寝転がって
「あああぁぁ゙、仕事辞めてええ!」
と頭を抱えて唸り出す。
「女の相手は前世でコリゴリだっちゅーのッ!」
「・・・う~ん、魔法使いじゃなかったら貴族女性専門の潜入捜査官に抜擢されるって・・・
レイモンドって色々と業が深そうだよね」
「魔法使いならどうだったんだ?」
ガバリと身を起こすが
「う~ん。王宮魔法使いって圧倒的に女性が多い職場でしょ。ハーレム状態で入れ喰いだった」
「入れ喰いって・・・」
彼はそのままソファーに撃沈した。
×××
「まぁ、俺の事はいいや。ヒロインに全くもって興味はないからな。それよりハロルド王子と距離を置くって具体的にはどうする気なんだ?」
多少ブスくれたままのレイモンドの質問に、腕組みをしながら首を傾げるリアーヌ。
「他国に留学とかいいんじゃないかしら? ほら、帝国とかに大学みたいなのあるでしょ? この国には無いけど。国内にいなかったら断罪されようもないから」
それを聞いて若干慌てるレイモンド。
「おま・・・ お前ね、莫迦言うんじゃないよ? これから王子妃教育でソレどころじゃないだろ?」
「え、そんなもんとっくの昔に終ってるわよ。12歳の時に王宮講師が教える事は御座いませんって土下座してたわ」
何でそんなに焦ってるのかな? と、首を傾げるリアーヌ。
「土下座って・・・」
「公爵家のお抱え講師は元々各国の王族の子息子女を指導する立場の優秀な人材だから、私は王族の必須履修科目と同等の内容を学んでるの。
もうとっくに履修しちゃってるモノを態々繰り返す必要はないから、元々定例のお茶会くらいしか王宮に用事はなかったのよ? 王子は知らなかったみたいだけど、言葉を遮られたから教えなかったわ。
でもお茶会も無くなるのなら外国に行っても良いじゃない?」
「はぁ成る程」
「主要各国の歴史とマナーも既に習得済みだし、言語はチートがあるから心配ないでしょ?」
「はぁ・・・」
「王子妃教育でやってないことって閨の作法くらいって言われたわ。
後残ってるのは王妃教育だったかな。それはいくらなんでも気が早すぎだし。そもそも王妃にならないし私」
「・・・閨?」
あら? また一瞬固まった?
「だから、本当に2年間やる事がない訳よ。王宮の講師陣に勉強教えるか・・・」
「何だそれ?」
「ゲール語がイマイチだから講師から教えて欲しいって言われてるの。返事はしてないけどさ。面倒臭いじゃん」
「・・・成る程、で、留学か」
「うん。物理的に距離が出来たらヒロインと王子の仲がグイグイ進むんじゃないかな~・・・と、何よその顔」
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