196 想いの先に②

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196 想いの先に②

   その言葉に目をこぼれ落ちんばかりに大きくして、 「え、リアはまだ不安だったの?」  と、レイモンドが驚いた。 「ううん、不安はなかったわ。  お父様達もそうだけど、レイモンドが私の心をいつも救ってくれたもの。  貴方が私の部屋にやってくるとその度毎に、 『ああ、ゲームや小説の中ではレイモンドとリアーヌがこんな風に過ごした描写は無かったわ』  って安心したの。  でもね、私自身があのゲームの事を朧げにしか覚えていなかったから、本当にコレが正解なのかが分からないっていう想いはいつも付きまとってたわ。  だって失敗したら私は冤罪で断罪されるんだもの」  ――しかもその後はヤンデレ魔法使いに攫われて監禁エンド(?)になる予定だったとは、レイモンドに向かって口が裂けても全くもって言う気は無いが・・・―― 「兎に角、安心した事には違いは無いって事だよね」  そう言って朗らかに笑う彼の金の髪が日の光りに透けてキラキラしたのだった――  ×××  「えッ? 妊娠した?」  庭でレイモンドと長時間過ごした後、夕食の為の着替えをする様にエスコートされて屋敷に戻った途端に、マーサからの報告を聞いて思わず上ずった声が出た。 「はい。  先程魔鳥で知らせが・・・って、奥様にも来ましたね」  彼女の言葉通りリアーヌの肩に白い鳩のような魔鳥が止まり、 『ポフンッ』  という音を立ててそれが白い便箋に変化した。   「え。  えぇ~・・・」  便箋に書かれた文字に目を通してリアーヌが困惑した表情になるが、そこで響いたのは玄関チャイムの音である。 「あ、花梨ちゃんだわきっと」 「もう約束の時間か」  レイモンドも懐中時計を見ながら呟いた。  玄関のが 『シュウンッ!』  という音と共にスライドする。  リアーヌがロイド卿にこれ以上壊されないように開発した自動ドア。  勿論コンフォート家の玄関や各部屋にも採用した――これ以上彼にドアをふっ飛ばされては面倒だからである。  王城は・・・ まあ、しょうがないので諦めて貰おう。  宰相閣下あたりが自動ドアを取り入れるかどうかをそのうち考えるのだろう。 「ヤッホーみーちゃん、来ちゃったよー・・・  ってどうしたの皆で変な顔しちゃって?」  フロイラインが首を傾げるとピンクの髪の毛がフワリと揺れた。  ×××  「え? コンフォート公爵夫人に赤ちゃんができたッ?!」  応接間に通されご機嫌でクッキーを手にしようとしたフロイラインの動きが止まる。 「そうなの、どうも年末年始に王宮に外泊した時に二人が盛り上がっちゃったらしくって・・・」 「あ、あぁ~・・・ 成る程ね」  公爵夫人は未だ30代後半なので、まぁ前世でも普通に妊娠するであろう年令である。  この世界では成人が16歳で結婚が早いこともあり、子供が産まれる年令は意外と早い事が多いが高年齢出産であっても治癒魔法があるため出産時のリスクはほぼ0に近い。  この世界での医師や産婆が水魔法を扱える者が多いのはそのせいでもある。 「うん、でもまあ、おめでとうだよね。  みーちゃんにもこれでができて、一人っ子じゃ無くなるって事よね~ッ」  感慨深くウンウンと頷くフロイの言葉に、 『『?』』  と引っかかり、リアーヌとレイモンドが思わず顔を見合わせた。 「弟? 何故?」
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