愚者のモノローグ

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愚者のモノローグ

 まだ君のことを覚えている――――。  あの日、花火に見惚れていた横顔も、ニコッと微笑むように笑う幼いころから変わらない笑顔も。  どんなに騒がしくても雑踏の中からでも、俺だけは聞き分けることができる少し高く澄んだ声も、その声で何度も「ユウくん」と呼ばれたことも。  そして、恋人になった日に繋いだ手から感じた君の温もりさえも――。  神隠しに遭い世界から存在を抹消され、忘れ去られてしまった君――弓月(ゆみづき)(はるか)のことを、俺だけは何ひとつ忘れていない。  たとえ目の前にいなくとも、記憶に、(まぶた)の裏に、耳の奥に、心の中に――君は変わることなく居続けている――。
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