1人が本棚に入れています
本棚に追加
愚者のモノローグ
まだ君のことを覚えている――――。
あの日、花火に見惚れていた横顔も、ニコッと微笑むように笑う幼いころから変わらない笑顔も。
どんなに騒がしくても雑踏の中からでも、俺だけは聞き分けることができる少し高く澄んだ声も、その声で何度も「ユウくん」と呼ばれたことも。
そして、恋人になった日に繋いだ手から感じた君の温もりさえも――。
神隠しに遭い世界から存在を抹消され、忘れ去られてしまった君――弓月悠のことを、俺だけは何ひとつ忘れていない。
たとえ目の前にいなくとも、記憶に、瞼の裏に、耳の奥に、心の中に――君は変わることなく居続けている――。
最初のコメントを投稿しよう!