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頬を緩ませてうなずく美百合の耳元に顔を寄せて、龍一は甘い声でささやいた。
「ここならフロア中の視線が防犯ブザーの代わりになる。来させるつもりはないが、万が一襲われたら、その店員を盾にしろ」
この人は、なんでこんな最高のイケメン顔で、こんな非情極まりないことを言ってのけられるのだろう。
もちろん、なんの罪もない店員さんを盾にするつもりなんかない美百合は、
『なんかあったら私が守るわよ』
の意思を込めて龍一を睨みあげた。
通じたのか通じてないのか、龍一は満足そうにうなずいてフィッティングルームから出ていった。
「お客さま、まず上を全部脱いでいただいて、準備ができましたらお呼びくださいますか」
そう言って傍を離れようとする店員の腕をそっと掴む。
近くにいてくれないと、敵が来ても守れない。
「お客さま?」
怪訝に首を傾げる店員に、美百合は、
「えっと、ひどい声で聞き取りにくいと思うんだけど、ちょっと聞いてくれる」
ガラガラ声をがんばって出して、時間稼ぎをすることにした。
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