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龍一がどこまで本気で、どこまで冗談を言っているのか、さっぱりわからない。
わからないが、機嫌は良さそうだから、店員たちが龍一の嫉妬でひどい目に遭わされるようなことはないだろう。
美百合はホッと息をついて、
「襲ってきたあいつらはどうしたの?」
と聞いた。
とたんに龍一の眉間には、また深い皺が刻まれた。
美百合の質問には答えずに、どこかに電話をかけると、
「エレベーターの中にひとりと、3階4階の男子トイレに5人いる。対処しろ」
言葉短く命じた。
「どこに電話したの?」
「警察庁次長席」
「桜庭さんの席ね」
いつも引退した龍一に仕事を押しつけてくる直属の上司の席だ。
「デパートの名前を言ってなかったけど大丈夫なの」
美百合が聞くと、
「こちらから電話した時点で位置情報が送られている。無駄なことを話す必要はない」
と当然のように答えられた。
やっぱり美百合たちはどこに行っても監視されているのだ。
「なんかまた、危ないことやってるの?」
スパイの仕事は引退したと言っているのに、少し出かければ敵が襲いかかってくる。
言わないけれど、また何かの事件に関わっているに決まっている。
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