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それに龍一が電話した先は、警視庁でも警察署でもなく警察庁。
ここが扱う事件は、国家を揺るがしかねないテロ事案ばかりだ。
テロ組織が絡んでいるような相手や、または戦争をしかけてきそうな国が相手だと、警察や日本の法律ではどうしょうもない。
捕まえたとしても、そいつは末端の下っ端。
トカゲの尻尾切りで終わってしまう。
龍一が関わるのはいつだって、1人を殺せば殺人だけど、千人殺せば英雄と呼ばれるモノと同じレベルの事案ばかりだ。
住んでいる国という立場が変われば、龍一の方が絶対悪として位置づけられる。
ところが、
「あいつらはプロじゃなかった」
龍一は呟いた。
「本当に今回は心当たりがない」
と顎に触れながら、考える仕草をした。
「龍一が忘れてるだけじゃないの?」
美百合が無邪気に聞けば、龍一は思いっきり眉をしかめて、イヤーな顔をした。
「俺が忘れる程度の相手に、銃を突き付けられたというのか」
「龍一でもそういうことぐらいあるわよ」
一回口をきいてしまえば、ストッパーが外れたようにしゃべってしまう。
美百合はもともとおしゃべりなタイプなので、軽口もするっと出てくる。
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