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龍一は余計なことを言ったと横を向いてしまった。
「ちょっと龍一ってば、一体どういうことよ」
許さないと詰め寄る美百合に、龍一はまいったとホールドアップした。
「考えていることを素直に伝えられるのは美百合の美点だ。美百合のそんな透明さが、時にまぶしくてたまらない」
龍一は目を細めながら言った。
「だから俺みたいな人間は目を逸らしてしまうこともあるんだ。美百合が原因じゃない。俺自身の問題だ」
龍一は美百合の腰を抱いて引き寄せた。
「感情を隠さず表現できるのは、美百合の心の強さのせいだな」
言っていることはよくわからないが、龍一が見つめてくる眼差しは真剣だ。
もしかして、褒められているのだろうか。
もとより、龍一の整った顔に弱い美百合は、あっという間に至近距離に耐えられなくなった。
頬を染めて横を向く。
「……もういいよ」
「美百合が心で泣きながら、店員たちを守ろうとしていたのも知ってる」
どこで見ていたのだろうか。
それとも見ていなくても、美百合のやること、考えることは、龍一には全部お見通しなのだろうか。
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