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てこでも動こうとしない龍一をどうするか悩んでいると、龍一は、
「曲の最中にドアを開けるのはマナー違反だぞ」
呆れたようにため息をついた。
そう言われてしまったら、美百合には返す言葉がなかった。
龍一の言う通りだ。
シュンとしてうつむく美百合に、龍一はようやく機嫌を直したのか、
「いい機会だ」
と呟いた。
見上げると、この世のものとは思えないほど美しい魅惑の微笑みを浮かべている。
「せっかくのワルツだ。踊ろう」
と、なんと手を出してきた。
ありえない!
恥ずかしい!
そう叫びたかったが、美百合は何も言えなかった。
だってそこにいるのは、まぎれもなく王子様だったからだ。
ダンスに誘う行為が、こんなにも様になっている日本人を、美百合は龍一の他に知らない。
「私、踊れない」
恥ずかしくて、またうつむく美百合の手を、龍一はやや強引に取って、
「練習しただろ。ほら」
と、優雅なステップを踏みはじめた。
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