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「……ん、うーむ。それで……一匹で旅をしてきたのか。……ネズミくんよ……冷たいようだが……自然の掟ってやつじゃないかな、それは。……いや、君にはつらかったことだろうけど、それは私にもわかるんだが……。君のお父さんとお母さんを食べて、どんな生き物が食べたのかは君も知らないとは思うが……なんとか生き延びたやつも、どこかにいたんだと……私は思う、思うんだ……」
……どうしてなのか、私はもう逃げられない小さなものに愛しさをおぼえてきた。
「……うん。……うん、そーだね。……いーんだ、その通りだと、ぼくも思ってるよ。……なんか、なんかの役に立ったんだと思う。おとーさんもおかーさんもお兄ちゃんやお姉ちゃん、そして、おじーちゃんも……」
「…………。……ああ、そう……だね……」
私は大きく息を吐き出した。
生じた迷いは私の心のうちを握って、柔らかいところをちくりちくりと刺す。
「……あっ、ワシミミズクさんはコーヒーすき? それとも、ココアがすき? ワシミミズクさんはどんな飲み物がすきなの?」
明るいネズミの問いかけに私は少しばかり驚いてしまい、頭を搾りつつも言葉を探した。
「……あ、ああ、う、ぅんん、そっ、そーぅだなぁ……こ、コーヒーは、飲むよ。……そう、飲む。ブラックをね」
大きな目を瞬くワシミミズクに小さなネズミは笑った。
「わ〜〜い!! じゃーさ、ぼくのお店に来てよ。今、ワシミミズクさんがぼくをひょいっと、足の爪で持ち上げて飛んできてくれた……あの近くにぼくの新しい家があって、お店にもなる予定だから。……ブラックか〜。……えーっと、何日かしたら開店できると思うよ。必要なものは揃ってるから、あとはお店の中を整えれば……お客さんに来てもらえるようになる〜」
ネズミは笑顔で言いながら、ワシミミズクへさらに聞いた。
「……ワシミミズクさんはこの森にどれくらい住んでるの?」と。
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