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「……えっ、私かい!? …………んんっと、私は……もう……かれこれ、三十年以上になるんじゃないかな……」
私の脳裏には亡くなった両親や友達、妻の姿が見え隠れした。
もう会えないだろう娘と息子の顔もちらつく。
ひょっとしたら……巣立っていった、あの子たちは……娘も息子も私が知らない間に……怪我や病気で死んでしまったかもしれない。
……我が子が親よりも早くに死ぬなんて、考えたくもないが……私にいったい何ができるのだろう。
それが……さっき私の言った自然の掟なのではないのか。
……ネズミには偉そうに言ったものの、私は覚悟が足りないまま、私は割り切れないまま、歳だけをとった気がする。
「……あ……ごめんね、思い出したくないこと、聞いちゃったかな。三十年?……も、生きていれば、つらいこともあるよね。……ぼくはさ……ワシミミズクさんよりはね、命が短いと思うんだよ」
ネズミの意外な言葉に難しい顔をしていたワシミミズクはわずかに首を傾げた。
「……え?? いのちがみじかい??」
「ほら……なにかに襲われて、食べられたりしなくてもさ……あまり長生きって、ぼくたち、ネズミはできないんだ。ぼくのおじいちゃんだって、10歳にもならないで死んじゃった。ワシミミズクさんみたいには長生きできない。ぼくは、3歳になったばかりだよ。……だから、ぼくがまだ生きてて、カフェやってる間に……ワシミミズクさん、ブラックコーヒーを飲みに来てよ。……美味しいやつ、用意して待ってるから〜〜」
ウキウキワクワクして、あどけない笑みを浮かべるネズミの姿に私は胸の奥底を鷲掴みされた。
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