第1章 最初の三人*

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第1章 最初の三人*

 *  尊と俺が出会ったのは、小学校五年生に進級した春だった。  尊は、俺の住んでいる家の隣に引っ越してきた。  母親とともに(あい)(さつ)をしにきたときに(かい)(こう)。  まるでフランス人形のような容姿をした尊の姿に思わず目を見張った。この世のものとは思えないほどに()(れい)で、中性的な容姿をしている尊に、俺は胸をときめかせた。  深海を思わせる藍色の瞳をじっと見つめていれば、尊は昼寝をする猫のように目を細めた。さくらんぼみたいに赤い唇から、清潔感漂う白い歯をのぞかせて、はにかんだ姿を今でも鮮明に覚えている。  容姿も、頭脳も、運動神経も抜群なあいつは、あっという間に学校で一躍人気者になった。  男女どちらからも好かれ、先生たちの受けもいい。クラスメートの母親たちからもアイドルのようにチヤホヤされていた。だれもかれもがあいつの(とりこ)になった。  かくいう俺も、尊と友だちになり、あいつのことを好意的に見ていた。  精巧なビスクドールのような見た目をした、優しい微笑みを浮かべる少年を「天使」と賞賛する声はあっても、「悪魔」と後ろ指をさす者はいなかった。  ――最初の犠牲者は、当時俺が片思いをしていたクラスメートの(よし)()()()()だ。
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