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第13話 幼馴染、魔界への堕落
「どうしよう
勝てない……」
追い詰められたアレクシアは
焦りの表情を隠せなかった。
その時
ブラッドレイは
「地上で勇者である貴様を殺しても
またいつかの時代に
人間界に勇者が誕生してしまう
地上の土にはその力がある
だから
貴様を魔界に送るのだ
そこの凶悪モンスターに勇者アレクシアを食わせることによって
勇者は二度と誕生しなくなる」
と説明した。
アレクシアは
「魔界ですって?」
と聞いて
怒りの表情を浮かべた。
「これは
カオス様が考えた戦略だ」
「魔界なんて冗談じゃないわ
そんなところに連れて
行かれてたまるものですか!」
と叫んだ。
ブラッドレイは冷たく笑いながら
「だったら抵抗してみるがよい」
そして
ブラッドレイは片手を空に掲げると
足元に魔法陣が浮かび上がった。
魔法陣は暗い紫色の光を放ち
周囲の空気が急激に重くなり
アレクシアはその異様な力を感じ取った。
「な、何を……?」
アレクシアは戸惑いながらも
逃れようと足を踏み出そうとしたが
魔法陣の力に引き寄せられるように
体が動かなくなった。
「さあ
魔界での新しい生活を楽しむがいい
貴様をこの地上から消え去るのだ」
とブラッドレイは冷酷な笑みを
浮かべながら言った。
次の瞬間
魔法陣から激しい光が放たれ
アレクシアの体は光に包まれた。
そして
光が収束するにつれ
アレクシアの姿はゆっくりと消えていった。
「さあ、泣き叫べ、勇者アレクシアよ」
とブラッドレイは満足げに言い放った。
魔界にて。
アレクシアが目を覚ましたとき
そこは見たことのない不気味な世界だった。
空は血のように赤く
黒い雲が渦を巻いている。
空気は重く
肌にまとわりつくような湿り気があり
息をするのも難しいほどだ。
足元には黒い岩肌が広がり
ところどころに赤く燃える裂け目が見えた。
周囲には異様な形をした植物が立ち並び
その葉からは毒々しい液体が滴っていた。
「ここが……魔界……」
アレクシアは痛みをこらえながらつぶやき
すぐに回復アイテムを取り出して傷を癒した。
肩の痛みが和らぐと
アレクシアは改めて辺りを見渡し
周囲の状況を把握しようとした。
遠くからは獣の咆哮のような音が響き
魔界がいかに危険な場所であるかを
感じさせた。
その時だった!
突然、黒い霧が渦を巻き
その中から
『シャドウリーパー』
が姿を現した。
死神のような姿をした影の存在で
長い鎌を振りかざしながら
アレクシアに襲いかかってきた!
アレクシアはとっさに
剣を抜き応戦したが
『シャドウリーパー』の動きは
予想以上に速く
その影の鎌は幾度も
アレクシアの防御をすり抜けるように
迫ってきた。
「くっ……強い……!」
アレクシアは歯を食いしばりながら
何とか攻撃を受け流そうとするが
『シャドウリーパー』の攻撃は
影を自在に操ることで
アレクシアの動きを封じるかのように
襲いかかる!
『シャドウリーパー』の鎌が一度
アレクシアの防具に触れた瞬間!
アレクシアは体から生命力が
吸い取られるような感覚に襲われた。
「こんなところで……
死ぬわけにはいかない!」
アレクシアは必死に立ち向かうものの
相手の攻撃をすべて防ぎきることはできず
徐々に体力を削られていった。
『シャドウリーパー』との一対一の
攻防が続く中
アレクシアは次第に押され始めた。
相手の鎌は影をまとい
まるで自分の意志を持つかのように
巧みにアレクシアを狙ってくる。
アレクシアは何度も
剣を振るって反撃しようとするが
その動きは重くなり
『シャドウリーパー』の素早い動きに
ついていけなくなっていた。
「ここで倒れるわけにはいかない……」
アレクシアは苦しげに息を整え
状況を冷静に判断した。
勝てないと悟ったアレクシアは
逃げることを決意する。
(今は退くしかない!)
そう心に決めたアレクシアは
隙を見て素早く身を翻し
その場から全力で逃げ出した。
『シャドウリーパー』が追いすがろうとするが
アレクシアは周囲の地形を利用しながら
何とか距離を取ることに成功した。
しかし
『シャドウリーパー』は執拗に
追いかけてくる!
アレクシアがうっすらとした
森の中に逃げ込んでも
黒い霧のようにその姿が迫ってきた。
アレクシアは木々の間を縫うように
走り続けたが
『シャドウリーパー』の気配は
全く消えることがなかった。
森の中は薄暗く
不気味な霧が立ち込めており
遠くで奇妙な声が響く。
足元には不規則に根を張る木々や
毒々しいキノコが生い茂り
一歩間違えれば転倒してしまいそうだったが
アレクシアは懸命に前進した。
(絶対にここから脱出しなければ……殺される!)
アレクシアは焦りを抑えながら身を低くし
全力で走った!
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