第15話 幼馴染、絶望を越えて

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第15話 幼馴染、絶望を越えて

アレクシアは身を隠しやすい岩場を見つけ そこに倒れ込み 仰向けになって呼吸を整えた。 荒い息を吐くたびに 胸が激しく上下し 痛みが体中を貫く。 耳には自分の心臓の鼓動が 鼓膜を打つように響き 焦りと不安がアレクシアを追い詰めていた。 「どうか……今だけはモンスターが来ませんように……」 心の中で何度も祈るように呟いた。 時間がゆっくりと過ぎる中 アレクシアはわずかな物音に敏感に反応し 神経を張り詰めていた。 (もしまた敵が現れたら、自分はもう戦えない……) その恐怖がアレクシアの胸を締め付けた。 運がいいことに1時間ほど経過しても モンスターは現れなかった。 ようやくアレクシアは体の重みが 少し軽くなったのを感じ 痛みも和らいできた。 しかし それでも体は重く 完全に回復するには程遠い。 緊張感に満ちた静養だったが わずかな安堵を感じながら アレクシアは次の行動を考え始めた。 しかし! 「!!!」 アレクシアが立ち上がった瞬間 目の前に闇の力を持つドラゴン 『ダークドラゴン』 が出現した。 すでに見つかっていた! 巨大な体躯とともに不気味なオーラをまとい ダークドラゴンはアレクシアを じっと見つめていた。 「また、ドラゴンだなんて……」 アレクシアは呟くが 次の瞬間 ーーーーーーーーーッゴゴゴ!!!! ダークドラゴンは闇のブレスを吐きかけてきた。 「くっ!」 アレクシアは反射的に身をかわし 何とか直撃を避けることに成功したが ブレスの一部がアレクシアを掠め その威力に圧倒された。 アレクシアは立て直し セラフィムを構え攻撃を開始したが ダークドラゴンの防御は非常に堅く アレクシアの攻撃はほとんど通用しなかった。 苦戦の末 アレクシアは意を決して最大スキル 『ディバイン・ラディアンス』 を放つことを決めた。 剣に光が宿り その光がドラゴンの横腹に向かって一気に放たれた。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーッドドド!!!! 眩い閃光が辺りを包み その瞬間 時間が止まったかのように感じられた。 剣がドラゴンの横腹に突き刺さり 全力の一撃が炸裂する。 しかし その輝かしい一撃が終わった後 ダークドラゴンは全くの無傷で 立ち尽くしていた。 その巨大な体は揺らぐこともなく まるでアレクシアの攻撃が単なる 風のようだったかのように受け止めていた。 「な……なんてこと……!」 アレクシアは驚愕し その眼に映るドラゴンの姿が 揺らいで見えた。 ダークドラゴンは冷たく光る眼で アレクシアを見下ろし 不敵な笑みを浮かべるように頭を動かした。 そして再びブレスを吐きかけてきた。 「くっ……!」 アレクシアは体を必死に動かし 何とかその場から飛び退いたが 精神的な疲労と絶望感がアレクシアの 動きを鈍らせていた。 強力なスキルが 全く通用しない現実に アレクシアは心の中に 大きな焦りと恐怖を感じていた。 そして! ーーーーーーーーーーーーーーッドン!!!!!! アレクシアは ドラゴンの尻尾で強打された! 「うううっ!!」 その瞬間 全てがスローモーションに なったかのように感じた。 凄まじい力がアレクシアの 体を吹き飛ばし 地面に叩きつけられるまでの 数秒が永遠に続くかのようだった。 アレクシアの体が岩のように重く 激しい衝撃で全身に鈍い痛みが走った。 「ぐあっ!!!」 背中から地面に叩きつけられた瞬間 肺から空気が一気に押し出され 息が詰まるような感覚が襲ってきた。 地面に倒れ込むと 視界は揺らぎ 目の前の光景がかすんで見えた。 意識が遠のく中で アレクシアの鼓動が耳元で不規則に響き 全身が麻痺したように動かなかった。 衝撃で体中に痛みが走り 息が詰まるような感覚に襲われた。 視界が一瞬暗転し 頭の中が真っ白になった。 アレクシアは 近くに大きな岩があったので なんとか立ち上がり そこに飛び込んで逃げようと 全力で走った。 痛みに耐えながらも必死に足を動かし なんとかその岩陰にたどり着こうとした。 すると アレクシアの目の前には 大きな川が勢いよく流れていた。 激しい激流だ! その背後から ドラゴンが迫ってくる! 「これしかない!」 アレクシアは覚悟を決め その激流の川に勢いよく飛び込んだ! ダークドラゴンは川の中までは追ってこず しばらく様子を見てから去っていった。 しかし アレクシアは川の中で力尽き 流れに飲み込まれるように沈んでいき 意識を失ってしまった。
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