43人が本棚に入れています
本棚に追加
第2話 囚われの幼馴染
奴隷として市場に晒されていたレオは
ある商人に買われていった。
手足を縛られたまま
レオは無言で商人に乗せられた。
馬車はガタガタと音を立てながら王国の街並みを抜け
次第に遠ざかっていく。
しかし
王国の領土を出てしばらくすると馬車が止まった。
商人は馬車から降りて
レオに近づいてきた。
そして
レオの縛られた縄を解き始めた。
レオは震える手で
縄が解かれた自分の腕を見つめた。
森の中
冷たい風が木々を揺らし
周囲は静まり返っている。
商人はにっこりと微笑みながら
レオの目を真っすぐて語りかけた。
「レオ殿
あなたがこうして奴隷として売られることになったのは
私たちヴァレンティア王国にとって非常に残念なことです」
「え？」
レオは驚愕して商人の方を見た。
商人は続けた。
「どうか誤解しないでください
私はあなたを奴隷として
買ったのではありません
あなたを助けるために
私ができる最善の方法でお連れしたのです」
レオはその言葉に驚きと困惑を隠せなかった。
自分がこれまで受けてきた扱いからは到底信じがたい言葉だった。
商人は続けた。
「ヴァレンティア王国は
勇者アレクシア様の故郷です
アレクシア様は幼馴染であるレオ殿を常に讃えておりました。
王国の民もまた
あなたの偉業を知っており
尊敬しています
だからこそ
あなたが奴隷の立場で苦しむことを
我々は見過ごせなかったのです」
レオは思わず顔を伏せ
涙が静かにこぼれ落ちた。
初めて感じるこの優しさに
レオの胸に閉じ込めていた痛みと
絶望が一気に溶け出したのだ。
「ありがとう…ありがとう…」
商人は真剣な表情でレオに向き直り
静かに語り始めた。
「レオ殿
実はアレクシア様が行方不明というのは
完全には真実ではありません」
「！」
「アレクシア様は今
魔王直属の配下である
ルシファリアに捕まっているのです」
レオは驚愕して
「なんだって！？」
「アレクシア様は勇気を持って
ダンジョンに連れ去られた人々を助けるため
単身でその危険な場所へと足を踏み入れました
そして人々を無事救い出すことに成功しましたが…
アレクシア様ご自身がルシファリアに捕まってしまったのです」
レオは息を呑んだ。
アレクシアが命を懸けて他人を救おうとしたことに驚きつつ
彼女が捕まったという現実に
打ちひしがれるような感覚に襲われた。
「アレクシア様はとても強かったのです
しかし
後から現れたルシファリアは
それ以上の実力者でした
奴は魔王の配下の中でも屈指の
戦士であり勇者であるアレクシア様ですら
捕まってしまったのです
アレクシア様は今も
そのダンジョンの奥深くで
監禁されていると聞いています
レオ殿
あなたの助けが必要なのです」
商人の言葉を聞き
レオの心に再び炎が灯った。
レオは言った。
「もちろんです！
アレクシア様にはどれほど恩を
受けたか分かりません
アレクシア様が危険だというなら
それを救い出すのも俺の使命です」
最初のコメントを投稿しよう！