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第3話 幼馴染を救え
レオは商人の話を聞き終わると
強い決意のこもった目で言い放った。
「俺はアレクシア様を救出する
そのために
何があっても彼女を取り戻す!」
商人はその言葉に感謝の念を込めて微笑み
粗末ではあるが剣と装備
そして一着の服をレオに手渡した。
「これはあなたにとって十分な装備では
ないかもしれませんが
どうかこれでアレクシア様を助けてください」
レオは力強く頷き
それらの装備を身につけると
一刻も早くアレクシアを救うため
監禁されているダンジョン
『奈落の深淵』へと急行した。
ちょうどその頃
監獄の暗い一室で
勇者アレクシアは冷たい石床に座り
手足に巻きつく重い鎖を見つめていた。
牢獄に繋がれた勇者アレクシアは
その苦しい状況にもかかわらず
女性として驚くべき美しさを保っていた。
深い黒のロングヘアは鎖の冷たい輝きに映え
柔らかなウェーブがその気高さを際立たせる。
透き通るような白い肌は
暗い監獄でも輝いて見えた。
筋肉質ではないものの
引き締まった体型は気高き
女勇者の象徴であった。
しかし
アレクシアが監禁されている場所は
過酷だった。
日も射さず
時間の感覚を失いかけたアレクシアの耳に
金属の扉が開く音が響いた。
顔を上げると
そこには魔王の配下である女の魔族
ルシファリアの冷酷な笑みが浮かんでいた。
「おい、女勇者アレクシアよ
今日は特別なサービスだ
10秒待ってやるから
逃げてみろ」
ルシファリアは薄暗い牢屋の外に立ちながら
扉を開け放ち
アレクシアに挑発的な言葉を投げかけた。
アレクシアは一瞬
その言葉の真意を図りかねたが
ルシファリアが言葉通りの鬼ごっこを
楽しんでいることを理解した。
屈辱的だが
この機会を逃すわけにはいかなかった。
(…逃げるチャンスがあるなら…!)
アレクシアはすばやく立ち上がり
錆びた鎖を引きずりながら監獄の外へ飛び出した。
扉を越えるとアレクシアは全力で走り始め
胸の鼓動が速くなるのを感じた。
10秒。
それだけでは外へ逃げる手掛かりを
掴むには十分ではなかったが
少しでも可能性があるならば諦めたくはなかった。
しかし
背後から聞こえてくるルシファリアの
不気味な声が彼女の耳に届いた。
「いーち、にーい…」
その声が次第に彼女に近づいてくるたびに
アレクシアの焦燥感は増していった。
それでも
アレクシアが廊下を駆け抜けているとき
「逃げ切れる!」
と確信した瞬間があった。
しかし、ついに
「じゅう」
という声とともに
ルシファリアは想像を遥かに
超えた高速移動でアレクシアを追跡し
一瞬で追いついた。
「え?」
アレクシアはルシファリアの圧倒的な速度に驚愕し
目を見開いた。
ルシファリアの鋭い手がアレクシアのベルトを掴んだ。
アレクシアはぐいっとベルトを引っ張られた。
「ああっ!」
ルシファリアは怪しい笑みを浮かべて言った。
「捕まえた!」
そのままアレクシアを地面に押さえ込み
彼女の手足を荒々しく縄で縛り上げた。
「う……」
ルシファリアは拘束したアレクシアを肩に担ぎ上げ
牢屋の方に戻って行った。
アレクシアは肩の上でジタバタと抵抗したが
あまりにも無力だった。
再び冷たい牢屋の中に押し戻されるアレクシア。
その目には悔しさが滲んでいた。
ルシファリアは牢屋の外から微笑み
楽しげに言った。
「やれやれ
やっぱり逃げるにはまだまだ実力が足りないな
アレクシア
お前の絶望する顔は本当に面白い
さて
次は何をして遊ぼうか?」
アレクシアは悔しさに唇を噛み
怒りに満ちた目で彼を睨みつけた。
しかし
ルシファリアの態度はまるで子供が遊び相手を
見つけたかのように無邪気に感じられるものだった。
ルシファリアはアレクシアとの
『鬼ごっこ』
を心から楽しんでいるのだ。
アレクシアを弄ぶことで
ルシファリアは自分の優位性を強調し
彼女の屈辱を増すことを狙っていた。
アレクシアの中には
今の無力な自分への怒りと悔しさが渦巻いていた。
しかし
それでもアレクシアの心には希望の火が消えることはなかった。
ルシファリアに弄ばれている状況であっても
アレクシアの心は折れず
むしろますます燃え上がっていた。
ルシファリアは牢屋の中に戻されたアレクシアに冷たい目を向け
鞭を手に取った。
「先ほど捕まった罰だよ」
と言いながら
何十発もアレクシアに鞭を入れた。
「うああああーーーっ!」
そのたびにアレクシアの体は激痛に震えた。
「これが勇者の姿か
鬼ごっこで捕まってしまうとは実に滑稽だな」
と嘲笑するルシファリア。
アレクシアは痛みの限界を超え
地面に崩れ落ちた。
激痛に耐えきれず
ついにアレクシアは意識を失い
冷たい石床に倒れ込んだ。
6時間後
アレクシアはゆっくりと意識を取り戻した。
全身に痛みが残る中
視界にぼんやりとルシファリアの姿が映った。
ルシファリアは再び冷酷な笑みを浮かべて
言い放った。
「さあ、また鬼ごっこをしよう
ただし
今度捕まったら…
その時は命はないと思え」
その言葉にアレクシアは心の中で恐怖を感じながらも
決して諦めない決意を固めた。
ルシファリアは牢屋の扉を開け
彼女に逃げるチャンスを与えた。
アレクシアは痛む体を無理やり動かし
再び廊下へと飛び出す。
背後でルシファリアがゆっくりと数を数え始めた。
「いーち、にーい…」
アレクシアは全力で走り
何とかこの地獄から逃れるために必死だった。
しかし
アレクシアには自分の体力が限界を迎えていることも分かっていた。
時間との戦い
そしてルシファリアという絶対的な敵を前に
アレクシアの心には焦りと恐怖が渦巻いていた。
「はーち
きゅう
じゅう!」
という声が響いた瞬間
ルシファリアの追跡が始まった。
ルシファリアの足音が徐々に近づく中
アレクシアは必死に逃げ続けたが
その圧倒的なスピードには太刀打ちできなかった。
アレクシアは限界まで走り抜ける覚悟を決め
なんとかルシファリアから逃れようとするものの
その不気味な笑い声がすでに背後から響いていた。
そして!
ルシファリアは逃げるアレクシアの両脚を
見つめながら、怪しく笑った。
ルシファリアは一本の鋭いナイフを取り出し
それをアレクシアの右足を切断しようと投げた。
その刃が迫り来る中
アレクシアの目にはまるで時間がゆっくりと
流れているかのように感じられた。
アレクシアの心臓は絶望で締めつけられ
逃れる術もないまま
ただ迫る刃を見つめるしかなかった。
その瞬間――
「アレクシア様!!」
風を切る音と共に
突然現れた影がナイフの軌道を変えた。
驚くべき速さで間に入ったレオが
腕を振り抜いてナイフを逸らしたのだ。
ーーーーーーーーッキン!!!!!!!
金属音が響き
ナイフは遠くへと弾き飛ばされた。
「え…?」
アレクシアは驚愕し
振り返った。
そこには
信じられない光景があった。
幼馴染であり
誰よりも信頼する相手
レオが自分を守るために立っていたのだ。
レオの姿は
夕陽に照らされてまるで英雄のように輝いて見えた。
その表情には揺るぎない決意と
アレクシアを救うための覚悟が読み取れた。
アレクシアの胸にこみ上げる感情は言葉では
言い尽くせないものだった。
「レオ殿…」
アレクシアの声は震え
その目からは感動の涙が止めどなく溢れ出た。
絶望の淵で見た光
彼女の命を繋いでくれたその存在が
今ここにいてくれることに
ただただ感謝が込み上げた。
「もう大丈夫です
アレクシア様!
俺が守ります」
レオの力強い声に
アレクシアは全身の力を失い
涙とともに感動が彼女を包み込んだ。
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