殿下は君と恋がしたい!

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この世界は剣と魔法の国 魔族、妖精族、エルフにドワーフそして人間 ある日、弱くて短命の人間の中に黄金の血液を持つ子供が産まれました。 黄金の血液は魔素が含まれており、体液を摂取することで魔力強化も叶う 魔法を扱う者には喉から手が出るほど欲しいものでした。 ここはマジェステック王国 この国の大公爵家に黄金の血液をもつ公子がおります。 この国では珍しい黒いストレートの髪を後ろに束ね、アンニュイなアイスブルーの瞳をした神秘的な容姿 白い肌にほんのり桜色の唇 白い肌に映える長いまつ毛が瞬きのたびに震える 美しい容姿を持つ彼はユツキ・グランデューク・ローラント 今年15歳のその少年は大公爵ローラント家の次男です。 魔法が好きな彼はよく城にある王国図書館へと出かけるのです。 今この図書館にはユツキしかいない 本を読む彼に近づいてくる金髪碧眼のアーモンド目の甘いマスクの青年 少し長い襟足は縛らずそのまま 180cmは超えるであろう長身に、服の上からでもわかる鍛えられた肉体を持つ 彼はルイス・キング・マジェステック 彼はこの国の第一王子、王位継承権第一位の青年 ユツキは本に集中していてルイスに気がつく素振りは無い ルイスは隣の席に座り持ってきた花をユツキの髪に生ける その時、気がついたユツキが顔を上げるとルイスが次の花を用意して髪に生けようとしている途中だった。 「殿下…いらっしゃったのであればお声かけ下されば…」 「いつ気がつくかなぁと思ってさ」 そう言いながらも髪の結び目に花を挿そうとする 「おやめ下さい」 「似合っているよ」 悪戯っ子のような微笑みは並の人間であれば一瞬で恋に落ちていたであろう 「光栄に存じます」 読書の邪魔されたからか不満げな声でユツキは答え、本を閉じた。 本来なら読書に戻りたいところだが、相手はこの国の王子 無下に扱う訳にはいかない 立ち上がり形式的なお辞儀をする 「座っていいよ」 「失礼致します」 椅子に腰掛けると本は無くなっていた。 ルイスを見れば本の中身を苦々しげに見ている 「よくこんなの読んでいられるな…頭が痛くなる。何語だこれ…」 「お言葉ですが、魔法書を学ばねば優秀な魔法騎士にはなれぬのではありませんか」 「うっ…痛いところを突いてくるね…」 ルイスは父親のような優秀な戦王になる事が夢だが魔法学はどうも性にあわないようで避けているのだ。 「ふぅ…とても素晴らしい本でした。この著者の本をまた読みたい…」 「取り寄せてあげようか?」 その言葉にユツキがムッとして答える。 「残念ながらこの本の著者は魔法書を一冊しか書いていないのです。こんなに素晴らしい魔法使いなのに…」 ユツキは本の背表紙をなぞった。 「だ、だったらさ、一緒に城下にでも…!」 ルイスが頬を染めながら話をしようとすると他に誰もいなかった図書館に足音が響いた。 「殿下、やはりこちらにおられましたか」 上品な白髪の初老はルイスの執事であるジョナサン・コリンズ どっしりとした体つきは安心感がある 歳のせいか身長は若い頃より縮んでいるが160cm後半はあるだろう 黒縁眼鏡に笑いジワが素敵な茶色い細目 博学多才でルイスやユツキの良き相談相手である 「殿下、魔法学のアデレイド先生がカンカンでございます」 「げっ…」 「アデレイド…ってアデレイド・デューク・ベル様ですか?」 「えぇ」 「知っているのか?」 ユツキが少し興奮したように答える 「古の魔法は魔力を大量に使う上、工程が複雑で時間がかかるものが多い それを魔力を少量に、工程を簡略に改良したのがアデレイド・デューク・ベル様という女性です。」 ルイスが少し押され気味で曖昧な返事をする 「そんな方に享受して頂けるなんて羨ましいです。しっかり励んでくださいませ」 ユツキに叱られ子犬のようにしゅんとしたルイスはとぼとぼと図書館から出ていくのであった。 「…おや?それはミドリの魔法書ではありませんか?」 「えぇ、そうです。ご存知なんですか?」 「はい。昔、陛下が読んでいたことがございます。しかし、そのような難しい魔法書をもう読めるようになられたのですね。陛下はその本を読むのに一年以上かかっておられました。」 ユツキにジョナサンは優しい言葉をかける 「虚弱な身ですので本を読むくらいしかすることが無いだけです。」 平静を取り繕っていたがジョナサンがいなくなったところでユツキは小さなため息をついたのだった。 「ジョナサン…ユツキ様を、で、で、デートに誘うにはどうしたらいい…」 ルイスはアデレイド先生に出された山のような課題を仕上げているところだ。 本来なら彼は家庭教師をすでに卒業している予定だったが魔法学のみ、一年オーバーした今も終わらずにいるのだ。 ジョナサンは首を傾げながら 「普通に誘うのではダメなのですか?」 「それが出来たら苦労してないんだ…!」 ルイスが頭を抱える 「明日から城下では春祭りがあるんだ。そこにユツキと行きたいんだ」 「そのために課題に取り組んでおられるのですね?課題が終わらねばアデレイド先生が部屋から意地でも出さないと仰ておりましたから」 ルイスは紙にぐるぐると落書きをする 「ユツキは今までまともに祭りを見たことがないんだ…だから、連れて行ってやりたい」 「左様でございますね」 ジョナサンは微笑みがら紅茶を机に置いた。
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