殿下は君と恋がしたい!

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翌日も特訓は続いたがユツキはどこか浮かない様子だった。 「どうされましたかな?魔力が揺らいでおりますが」 「あ…申し訳ございません。少し考え事をしてしまっていただけです。」 「一度休憩致しましょう。」 「え?しかし…」 「頭の中をスッキリさせてからでないと怪我をしますよ」 「…はい…」 ユツキは昨日と同じように木陰のベンチに座りアイスティーを貰った。 「兄にバレてしまいまして…」 ユツキが申し訳なさそうに言うとジョナサンがニッコリ笑って安心させてくれる 「なるほど、喧嘩でもしましたかな?」 「はい、許すわけない…と言われてしまいました…」 「左様でございましたか。」 ジョナサンに促されアイスティーを一口飲むが喉を通らない様子 「兄は私の病を治すために幼い頃から勉学に励んでいました。それを握りつぶすような真似をしてしまったと今になって後悔しています。昨日までは病が治るかもしれないと浮かれて兄の気持ちも考えずに…」 ユツキはもう特訓はやめてしまいそうな勢いだ。 「ユツキ様、きっと貴方ならばイブキ様と分かり合うことが出来る。私はそう信じております。」 「でもどうすれば…」 「それを見つけ出すのはユツキ様の仕事ですよ」 ジョナサンはそう言うと立ち上がった。 「今日の特訓はここまでに致しましょう。ユツキ様には先に片付けなければならないことがありそうです。」 ジョナサンはそう言うと頭を下げ屋敷を出ていった。 ユツキはジョナサンを見送った足のままイブキの部屋へと赴いていた。 ドアをノックするが返事は無い 「兄様、いらっしゃいますか?」 声もかけてみたが返事が来る様子は無い しかし、中ではガサゴソと物音がしているため人はいるだろう ユツキの声を無視するということはイブキが中にいるのだろうが 「兄様、入ってもいいですか?」 ユツキが再度ノックしながら言うとドアがゆっくりと開いた。 「なんだ」 不機嫌なイブキが目の下にクマを作って出てきた。 「あの、もう一度話がしたくて…入ってもいいですか?」 「…話すつもりは無い」 ユツキを押し出し早足にどこかへ歩くイブキ 「兄様、待って…」 あまりにも早く歩かれるものでユツキが駆け足で追いかける 「けほっ…ごほっ…」 急に走ったことで心臓に負担がかかり咳き込んでしまった。 イブキもそれに気が付き、思わずユツキに駆け寄る 「兄様、捕まえました…」 「お前今の嘘か?」 「嘘じゃないですけど、捕まえましたから」 ユツキはイブキの腕を掴んだ。 「話、ちゃんと聞いてください」 「…分かった。」 談話室に移動し対面する 「今まで兄様が私のために惜しみない努力をしていらっしゃいました。なのに、手のひらを返したように兄様から離れて行こうとしてしまって…自分が恥ずかしいです。」 「…俺も昨日は言いすぎた。頭に血が上って嫌な言い方をしてしまった。」 イブキも一日頭を冷やしたことで冷静になったのか気まずそうに謝罪した。 「兄様が反対されるなら、今回の話は残念ですが無かったことにして頂きます。 塔に行くまでも長い道のりがありますし、塔の中には魔物もいます。兄様がお医者様になって治していただく方が安全で確実ですから」 ユツキはふっと笑って気持ちを切り替えたように見せる 「そうと決まれば、殿下に連絡しないと行けませんよね。殿下もジョナサン様も私の為に準備してくださっているでしょうし」 ユツキは重い腰を上げ連絡するために部屋を出ようとした。 「ユツキ、待て」 イブキに止められ振り返ると昨日と同様、額や首筋に手を当てられる 「やっぱりな、熱がある」 「え?」 「まったく、しおらしいと思ったら」 ユツキはそのまま寝室へと連れていかれベッドに寝かされる 「急に慣れないことするからだ。」 ユツキの血圧を測りながらイブキが小言を言う 「だって…」 熱を自覚すると体はどんどんだるくなるものでまぶたが徐々に落ちてきた。 「変なこと考えてないで早く寝ろ」 イブキに頭を撫でられながら火照る体を冷ます。 「…15分」 「?」 イブキの突然の呟きに閉じかけていた目を開く 「15分、物理防御魔法が維持出来たら外泊を許す」 「本当ですか…!?」 イブキの言葉に思わず起き上がると目眩がしてベットにつっ伏す 「急に動くな。15分維持できなかったらいつまで経っても外泊できないからな」 「はい、頑張ります。」 ユツキはベッドに潜るとイブキの手を握ったまま眠りについた。
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