殿下は君と恋がしたい!

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適当な喫茶店に入り、心を落ち着かせる 明るいテラス席は心を落ち着かせるのにピッタリだ。 「殿下、落ち着きましたか?」 「…あぁ、すまなかった。」 少しルイスが不服そうだ。 「いえ、私のためにしていただいたことですから…」 ルイスはしゅんとして項垂れている ユツキの前で醜態を晒してしまったためだ。 「何かお礼をしなくてはいけませんね。何かございますか?」 ユツキが聞くとルイスは少し頬を染めた。 「そ、そうだな…なにがいいか…」 「なんでも良いですよ」 「じ、じゃあ!て、手を繋いでくれ…」 「手ですか?それでよろしいので?」 ルイスは顔を真っ赤に染めながら言う ルイスのお願いにユツキはクスリと笑った。 「良いですよ。では、早速」 ユツキはルイスに手を差し出した。 ルイスはおずおずと手を差し出し握った。 「少し…照れくさいですね…」 「あ、あぁ…」 二人は頬を赤く染めた。 「改めてありがとうございました。殿下」 ユツキが姿勢を正して言う 「帽子のことか?気にしなくていい。近くの木に引っかかっていたのを取ってきただけだ。」 「それもですが、先程絡まれているのを助けて頂きました。」 「ユツキが困っていれば助けるのは当たり前だ」 ルイスが握る手に少し力を込めた。 「この祭りに連れてきていただいたことにも感謝しています。」 「それに関しては、感謝される筋は無い…ユツキのことを守れていない」 「そのようなことはありません。殿下が居なければ私は一生祭りに来ることもなかったでしょう。」 ユツキは重ねられたルイスの手を控えめに握った。 「っ…!」 ルイスは声にならない声を上げた。 「本当に逞しくなられましたね。羨ましいです。」 ユツキが悲しそうな表情を見せた。 「来られて良かった…」 ユツキが少し悲しげな表情を見せた。 「…次も来られるさ」 「残念ながらその保証はできかねます。症状が重くなれば私は死にます。これが最後かもしれません。ですから、私の事はどうかお忘れになって…」 言葉を最後まで言い終える前にルイスによって口を塞がれる 柔らかい唇が重なり言葉を封じられる 「んっ…!?」 暖かい手で包み込まれ指を絡められる 体を乗り出しテーブルに手を着いたことで紅茶の水面が激しく揺れる 唇が重なっていたのはほんの一瞬だっただろうが、辺りから音が消え時間が止まってしまったようだった。 ザッと風が葉を散らす音で我に返る 思わず口元に手を当てれば鼓動がさらに早くなった。 ルイスは未だにテーブルに手を着き身を乗り出した状態のままだ。 「すっごい好きだ!この世界で一番好きなんだ!家族とか友人とは違うんだ!」 「!?」 「だから、忘れろなんて…言うな」 ルイスの声は徐々に弱くなっていく 「は、はい…」 ユツキはぎこちなく返事をすると恥ずかしさのあまり俯いてしまった。 その間も二人の手は繋がれたままだ。 「ユツキの体を良くする方法は…俺が探し出してやる!だから、安心しろ…!!」 ルイスは吃りながらも宣言する 「は、はい…よろしく、おねがいいたします…?」 ユツキが押され気味に返事をする 「…もう、夕方だな…そろそろ、行くか…」 「はい…」 ルイスはユツキの手を握ったままローラント邸の方へと歩き出した。 人混みを避けユツキのスピードに合わせながらも足早に目的地に向かっていた。 邸宅に着くとルイスはようやく握っていた手を放した。 「ユツキ…さっきのは、その…ほ、本気だ。でも、返事はいつでもいい…」 ルイスの言葉が尻すぼみになっていく 「…はい」 ユツキは静かに返事をした。
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