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邸宅の門の中に入るとレイザーが鬼のようなオーラを纏っていた。
かなり分かりにくいが確実に鬼だ。
「レイザー…?」
レイザーは無言でユツキの背中に手を回し屋内へと連れて行った。
「レイザー?」
ユツキは頭にハテナを浮かべながらレイザーに促されるままに部屋に戻って行った。
「殿下、随分大胆でしたな。」
ジョナサンに言われルイスは顔を真っ赤に染めた。
「おまっ、まさか見てたのか!?」
「当たり前でございます。お二人をお守りするのが爺の役目でございますからね」
「こういう時だけ爺の真似をするな!」
ルイスが赤面涙目でジョナサンの服の襟を引っ張る
「ほっほっほ…なんのことですかなぁ」
「どこから見てた」
「全部ですなぁ」
「あー!!」
ルイスは恥ずかしさのあまり奇声を上げながらジョナサンを前後に振る
「まあまあ、これでも力を尽くしたのですよ?レイザーが帽子を取りに行くのを止めましたし、ユツキ様が絡まれているのを助けるのを止めました。キスをされていた時も、レイザーが飛び込んでいこうとするのを止めたのですから」
「あーあーあー!!全部知ってる!全部知ってる!!だから嫌だったんだ!お前達を着いてこさせるなんて!!」
恥ずかしさのあまりルイスは耳を塞いで大声を上げた。
「レイザー?」
無言のレイザーにユツキが声をかける
部屋に着くなり湯浴みの準備をされ湯を張った浴槽の中に放り込まれる
髪を洗われ丁寧に体も洗われていく
「レイザー…?急にどうしたんですか…?」
指先まで丁寧に洗われながらユツキが尋ねる
「いえ、ユツキ様の貞操を守れなかった私のせめてもの贖罪でございます。」
レイザーが懸命にユツキのルイスと握っていた手を洗う
「ていそう…?って!?まさか見ていたんですか!?」
ユツキが驚いて手を引っこめる
それを見たレイザーは急いで手を再度取り、爪の中まで綺麗にしていく
「旦那様からくれぐれもと言われております。まさかこのようなことになるとは夢にも思いませんでした。」
顔は無表情だが、かなり焦っている様子だ。
「レイザー、私の貞操は別に侵されていませんよ」
ユツキはレイザーを落ち着かせるように言う
「殿下が私の体を治してくれるそうですよ」
「殿下が…?しかし、どんな名医にもユツキ様の体を治すことは出来なかったではありませんか」
ユツキの症状は非常に重かった。
朝起きれば体が動かない日がある
謎の高熱により走馬灯を見た。
息ができず悶え苦しんだ。
回復魔法も薬も効かず打つ手無しの謎の体質
その一端は黄金の血液がしめていた。
黄金の血液の持つ魔力にユツキの体が拒否反応を起こしているのだ。
その強大な魔力を抑え込むのに全細胞が悲鳴をあげていた。
血液がユツキを飲み込もうとしているのだ。
「えぇ、ですからそこまで期待はしていません。」
レイザーは手を止めた。
「ですが、賭けてみようと思います。殿下に私の未来を…もし、殿下が勝ったなら私の全てを捧げるつもりです。」
「ユツキ様…」
ユツキは浴槽の中で足を抱えて窓の外を見る
「健康な体になれば、貴方の負担ももっと減らせますね」
「私は…そのようなことは…」
ユツキの容態は急変しやすくレイザーはあまり休みが取れないでいた。
「私もまた頑張ってみます。体を治す方法をまた探してみます。」
ユツキは体を湯に沈めた。
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