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夜になった。
ここには、小さめのいろいろな物が袋に入ったまま、あるいは野ざらしになったまま転がっている。
亡霊のようにさまよっていた記憶が、ひとつにまとまった。持主が物を手にしたときから、壊れたり飽きたりして手放すまでの記憶だ。
「あんなに喜んでいたのに、なぜ持主は私を手放したのだろう?
なぜ私はここにいるのだろう?」
壊れた物や不要になった物が、ここにいることをふしぎに思っている。それは私もロンも同じだ。
「独りで動けないから持主のもとに帰れない」
あちこちで嘆きが聞えはじめた。ここに集められた物たちは、みな動けない。ここから逃げ出せない。
すると、近くの袋の間からノートパソコンが説明した。
「僕はコムと言います。
ここは五十センチ以下のゴミの集積所です。
僕たちは不要になって廃棄されました。
これから焼却か再利用かに仕分けされます。
再利用できる物は解体して部品を再利用し、残った物は焼却です。
こうして僕たちは寿命を終えるんです。
人社会は、修理して使える物も、持主の意志で廃棄されるんです・・・」
コムは人社会の廃棄の実体を説明した。
私はここにいる私たちのような物たちが廃棄物と呼ばれているのを知った。
私とロンの持主だった彼女が、私たちの他にも何か廃棄しているような気がした。
彼女がどんな思いで私たちを廃棄したのだろう・・・。
私は、彼女が廃棄してた物から、彼女の気持ちを探してみようと思った。
「私でよければ協力しますよ」
そう言ってノートパソコンのコムが、私たちの持主の廃棄物を探した。
しばらくすると、コムは、廃棄物の下に埋もれている、かつて彼女の持ち物だったノートパソコンと携帯と電子辞書とボイスレコーダーに残された彼女の記憶を見つけた。
「人が病気になったり怪我したりすれば病院で治療するのに、人は我々のような物を修理せずに廃棄し、新しい物と交換するのです」
コムはそう言った。
彼女の記憶に、壊れたら交換すればいいという思いしかなかった。
私は、こんな人が私の持主だったことを許せなかった。
「なんて自分勝手な不当な扱いなんだ!」
コムの説明で集積場に廃棄物の不満が拡がった。
私たちにも、修理されていつまでも動きたいという思いがある。
私は、私たちのような廃棄物を出してはならないと思った。
私は人になりたいと思った。
私たちの寿命がつきるまで、私たち使いつくす人になりたいと思った。
「コム。どうしたら人になれる?」
コムはいろいろの知識を記憶している。何か知っているはずだ。
「すみません。私は廃棄物が人になる方法を知りません・・・」
コムは私におわびした。
私は人になりたいと思った。
強く思った。
何度も何度も思った。
そのうち私はあのクレーンの大きなツメで捕まれて分別機へ運ばれ、焼却されるか解体処理されて寿命を終えるんだ・・・。
私は人になれない・・・。
悲しかった・・・。
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