ある坂道

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もうすぐ坂を登りきる。 懐かしい高校の校舎が見える。 暗くて化け物のようだった。 長い坂を歩いたが、何も答えは出なかった。 あと10メートル。 何事も始まりがあれば、終わりがある。 俺のちっぽけな逃避行もここで終わり。 気の迷いさ。 もう帰ろう。 いいじゃないか。 もう気は済んだだろ。 彼女にはなんて言い訳しようか。 帰りの電車で考えよう。 この坂を登りきったら、きっと俺は大切な何かを失う。 まだ間に合う。 引き返せ。 頭がぐるぐるし始めた。 あぁ、もう何でもいいや。 そう思った時には、俺は校門の前に立っていた。 心が一瞬、静かになった。 急に視界が晴れたように、静かになった。 俺の中で人生がズレるのを感じた。 おもちゃに熱中していた子供が、遊びに飽きた感覚だった。 高校の前にあるバス停のベンチにユラユラと座る。 おもむろにスマホを開いた。 そこで俺はマッチングアプリを入れた。
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