~記憶を失くした男~

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カフェに入り、コーヒーと軽食を頼むと 「この時間なら、まだ、モーニングセットが 出せますけど?」 店員がそう言ってきた。 つまりは午前中って事か・・・ 「あぁ・・・じゃあ、モーニングセットで」 と注文した。 注文が届くまでの間、窓の外を歩く人々を ボーッと眺めていた。 見知った顔は無い、っと言うか分からない。 「お待たせしましたー」 そう言って、モーニングセットを置く店員。 「今日はお一人なんですね?」 と、続けて言う。 「えっ?あぁ?」 我ながら間抜けた返事だ。 「いつもは、奥様?とご一緒なのに」 店員は、そんな事を言い残し、戻って行った 「と言う事は、俺、結婚してるのか?」 そんな疑問が頭を過る。 結婚はともかく、一緒に来店する女性は 居ると言う事だ。 顔を覚えられるほど、頻繁に モーニングセットの目玉焼きを食べながら 「目玉焼きは、お前のが一番、俺好みだな」 と、誰も座っていない向かいの席に向けて 言ってしまった・・・
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