1人が本棚に入れています
本棚に追加
「さあさあ、いろいろ考えても、しかたないさ。
私には家族がいるがあきらめた。この宇宙船に乗艦するとき、そう決意してこの計画に志願した。
みんなも、私と同じ気持ちで乗艦したことと思う。
知ってのとおり、この宇宙船は惑星移住計画用球体型宇宙戦艦のプロトタイプ〈ノア〉だ。ノアの方舟だ・・・」
ジュリア・ダラン 作戦司令官はそう言った。地球上で過去の生活をすることはできそうになかった。
リサ・タジマ医学者が言う。
「地上の生態系は元にもどらない。この〈ノア〉は惑星移住計画用球体型宇宙戦艦だからここでも暮らせる。新しい惑星を見つけて移住も考えられる。
それには子孫を残すことが重要よ・・・」
地球の気象も生態系もは復旧しなかった。無理はない。地上は放射性物質と放射線の嵐だ。惑星移住計画用球体型宇宙戦艦のプロトタイプ〈ノア〉は予想していたとおり、地球帰還を放棄した。
十数年後。
〈ノア〉に二十人の子どもが増えた。
「ここに示したように、各国のイデオロギーの相異から、話しあうこともなく、核弾頭付きのミサイルを打ちこんだ結果、放射性物質と放射線で、地球の生態系は崩壊し、我々は地上に住めなくなった。そして、今、ここで暮している」
子どもたちを教育するジュリア・ダラン作戦司令官は、宇宙放浪の民となった原因を子どもたちに教えた。
(了)
最初のコメントを投稿しよう!