9 宇宙盗賊

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「内部4D映像をモニターに出せ!」  コントロールデッキに3D映像が現れた。ステーション内に人はいない。 「空気とエナジー変換機と人の他に、無くなったなくなったものは何だ?」 「ステーションの構造体部だけが残っています。他は全て存在しません」 「水も空気もか?動植物も、土もか?」 「そうです。残っているのはステーションだけです」 「排泄物も無いのか?」 「ありません」 「何があった?」 「記録がありません。記憶が消去されています」 「情報収集衛星の探査映像を出せ」 「わかりました」  管理AIのパエトンが宇宙ステーションの内部空間に、情報収集衛星が捕捉した探査映像を3D映像化した。  巨大な国際宇宙ステーションの回転軸に、スペースコロニーほどの大型宇宙戦艦が接艦し、一時間ほどで離艦した。 「これは!宇宙盗賊だ!」  ヤツラ、自分たちの小惑星型宇宙船を巨大化するために、有機物質の原料を奪っている。奪うたびに、スペースコロニーほどの大型宇宙戦艦は、小惑星規模に巨大化している・・・。大型宇宙戦艦の中で、ヤツラの子孫は奪った有機物質に見合う数に増加しているだろう・・・。  ヤツラの大型宇宙戦艦に存在する元素の量はかぎられている。有機物質の原料となる各元素の総量が増えぬかぎり、有機体の総量に限度がある。つまり、一つの種が増えると、他の有機体が減少する。  他の有機体を減らすことなく一つの種が増加するためには、有機物質の原料となる各元素の総量を増やさねばならない。  このことを理解している宇宙盗賊は宇宙空間に存在する施設を襲い、排泄物から土、動植物などの生命体、気体や液体など、有機体の原料となるあらゆる物を奪ってゆく。  宇宙盗賊にとって人類は宇宙盗賊の種を培う、単なる有機原料に過ぎない。捕獲された人類は分解されて有機原料にされる。 (了)
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