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二 飛行人シドラ
洞窟の中を浮遊しながら、グランドラが言う。
「走歩人は、浮遊人の気持ちがわからない。だから、我々が飛行人を警戒することがわからない。走歩人に飛行人のことを話してもむだだよ」
思っていたことを指摘されて、しぶしぶシドラが答える。
「わかったよ・・・」
「それから、飛行人を探ろうなんて思わないことだよ。いいね」
グランドラは、うつむいたシドラをじっと見つめた。
「うん。わかった・・・」
グランドラがそう言うのだから、浮遊人に、飛行人を探るチャンスがあるんだとシドラは思った。そのチャンスを待とう。
「ひとつ教えておこう。
走歩人と浮遊人の関係が、浮遊人と飛行人の関係に似ている。
だがな、飛行人は、我々浮遊人や走歩人とはちがうと言われとる」
「何がちがうの?」
シドラは顔をあげてグランドラを見つめた。グランドラは何か知っている・・・。
「それは、わしも知らぬよ。飛行人を見た者はおらんのじゃ」
グランドラがそう言うと、シドラは洞窟から外へ出ようと浮遊しかけた。
グランドラは腰を伸ばすように洞窟を浮遊し、シドラをつかんで洞窟の中に引きよせた。
「いいかな、シドラ。これまでも、飛行人を探ろうとした者はたくさんいた。みな、探しに出かけたまま、帰ってこなかった・・・」
「・・・」
シドラは何も言えなかった。飛行人に近づくだけで、浮遊人は危険な目にあうらしい。だけど、なんとかしないと、飛行人に捕まって浮遊人がどんどん減ってゆく。グランドラは捕まらずにいるが、他の家族はみんな捕まって、残されたのはシドラとグランドラだけだった。シドラはなんとかして、飛行人のことを知りたかった。
「外へ行くのか?」
「うん・・・」
「ここから外へ出てもよいが、遠くまで行ってはならぬよ」
グランドラは大きな目を動かして外の安全を確認し、シドラに注意した。
「ドラゴに会ってくるだけだよ」
シドラは従兄のドラゴの名を言った。ドラゴの洞窟はすぐ隣だ。
「遠くまで行かない、飛行人のことは探らないと約束してくれ」
グランドラは大きな目でシドラを見つめた。シドラはグランドラを見つめてうなずいた。
「うん。やくそくするよ」
そう約束し、シドラは住んでいる洞窟から、砂地の大地の上へ浮遊した。
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