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三 従兄ドラゴ
「大気圏はこうなってるんだ」
シドラの従兄ドラゴは戸棚から図面を取りだして、テーブルに図面をひろげた。この洞窟がある岩山のまわりに砂の大地が拡がり、その上の空間に一つの層がある。その上にもう一つの層があり、さらにその上にもう一つの層がある。
「下の層が停滞圏だ。俺たちが浮遊できる、ここのまわりだ。流れが止まってるのさ。
そして、その上にあるのが対流圏。ここはいつも流れてる。どこから流れてきて、どこへ流れてゆくのか、誰も知らない。対流圏には暖かい対流圏と冷たい対流圏があるんだ。ここは暖かい対流圏だ。
対流圏の上にあるのが成層圏だ。成層圏は現れたり消えたりする。成層圏には暖かい成層圏と冷たい成層圏がある」
ドラゴは図面の三色に分けた層を示した。
「浮遊人が飛行人に連れてゆかれたのは、どこなの?」
シドラは図面を見つめてドラゴに尋ねた。
「この成層圏の上、大気圏外だ」
ドラゴは成層圏の上を示して顔をしかめ、目を見開いてシドラをギロリとにらみ、口をとがらせている。怒りの顔だ。
「シドラ。成層圏の上へ行く気か?」
「何のこと?」
あたしの考えていることは見透かされている。どうしてわかったんだろう。シドラは驚きを隠せないまま、そう答えた。
「隠したってわかる。飛行人を探りにゆく気だろう?俺たちがいるこのあたりの成層圏から、大気圏外の飛行人を見た者はいない。飛行人を探りに行って、もどった者もいない。
停滞圏や対流圏で、仲間は、ビームと衝撃波で追い立てられてシールドで捕まって消えた。大気圏外に飛行人がいるのは確かだ」
それからドラゴはシドラに、飛行人の確認は非常に危険だと説明した。
「でも、確認して、なんとかもどる方法があるはずだよ」
シドラは口をとがらせてドラゴに言った。
「誰ももどらないんだから、方法はないのさ。飛行人を探るのはやめておけ。グランドラにも、そう言われたんだろう?」
「・・・」
ドラゴのギロリとした大きな目で見つめられ、シドラはうつむいてしまった。
「やっぱり、言われたんだな。探るのはやめておけ」
こんなことを言っても、あの頑固者のファドラの娘シドラだ。隠れて飛行人を探る気だ。どうすればいいんだ?
ドラゴはテーブルに拡げた成層圏の図面をたたんで戸棚にもどし、シドラを説得する方法がないか考えた。だが何も思いつかない。
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