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シドラはゼルフの思いを感じた。 ゼルフは成層圏にいた飛行人を見たことがあるのだ。
「飛行人を見たことあるの?」
「ああ、あるよ」
「どんななの?」
「へールのごとく大きくて、ドルフのごとく利口で、ときにはサルークのごとく速くて、マナークのごとき大きさだ」
「さっき、 ゼルフがつぶやいてたね。どういうことなの?」
「自分の目で、成層圏から飛行人を観察することじゃ」
シドラはゼルフの心を感じた。シトル族のような甲冑と翼をまとったシドラの姿が ゼルフの心に現れてる。
「シトル族のように身体を硬くして、硬くて強い翼があればいいんだね?」
「そういうことじゃ。飛行人を探ってどうする?」
ゼルフの問いに、シドラは訊ねかえした。
「飛行人は、どうしてあたしたちを捕まえるの?」
「わしにはわからぬよ。飛行人に訊くしかなかろう」
「そんなことしたら、捕まるよ」
「捕まればわかるさ・・・」
「捕まったら、みんなに知らせられないよ」
「捨て身にならねば、わからんこともある」
「わかった。上まで昇ってみるよ」
シドラは対流圏を越えようと決意した。
「しっかり身支度するのじゃぞ。対流圏で流されたら、あわてずにチャンスを待つのじゃ。いつか、どこかへたどり着く。そしたら、また昇るのじゃ。
では、またな。いずれ、どこかで会う機会があるだろう」
ゼルフはそう言ってシドラの前から、対流圏へむかって浮遊していった。
シドラはふたたびドラゴの洞窟を訪ねた。すると
シドラに、ドラゴが言った。
「やっぱり、ゆくのか?」
ドラゴは、 ゼルフがよけいなことを言うからだと思いながら、隠していた飛行装備をシドラに見せた。隠していたって、シドラは俺の心を読んでいる。いつか装備のことを知るはずだ。
「こんなのがあったんだね。身に着けていいよね?」
シドラはドラゴを見あげた。ドラゴはシドラより大きい。
「ダメだと言っても、着けるだろう」
「うん」
答えながら、シドラは硬い飛行服を身に着け、ヘルメットをかぶり、硬い翼がある装備を背負い、装備から延びている調節装置を腕と手に装着した。
「推進剤は満タンにしてある。腕にとりつけたメーターが200になっているだろう。
対流圏の流れがなければ、10目盛りで対流圏を越えるはずだが、対流圏の流れがあるから20目盛りは使うだろう。
20目盛り使っても対流圏を越えなければ、よそへ流される可能性があるから、ここにもどってこい。
左手にとりつけた握りの、赤と緑のボタンが推進と停止だ。
右手にとりつけた握りが、速度調整だ。強く握れば速く飛行し、やんわり握ればゆっくり飛行する。
推進剤を点検するから、外でためしてみろ。最初はゆっくり飛行して、ここにもどってこい。
さあ、ゆけ!」
ドラゴは準備ができたシドラをともなって、ケブロクの洞窟を出た。
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