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外では、グランドラが待っていた。
シドラはわしの孫だ。ファドラの娘だ。わしと口約束しても、心に浮ぶことはとめられない。グランドラは、シドラを引き止めるのをあきらめていた。
「ためしてくるね・・・」
シドラはグランドラとドラゴにそう言うと、左手の推進ボタンを押した。
シドラの身体がゆっくり浮遊した。シドラは少し離れた岩山の方向へ身体を傾け、右手の握りをゆっくり握りしめていった。
シドラの身体が浮遊から飛行に変った。速度が増して、一瞬に、ケブロクの岩山が目の下を通りすぎて、その先にある岩山が近づいた。
シドラは右手の握りをゆるめ、身体を捻った。するとシドラの身体は大きく旋回して岩山を飛びこえ、シドラの洞窟があるケブロクへ方向を変えた。
ふたたびシドラは右手の握りを強く握り、飛行速度を増していった。
シドラは右手の握りを緩め、その場に浮遊して、すっとケブロクの洞窟の入口に降り立ち、飛行装置を停止した。
「はじめてにしては、うまいもんだ。目盛りはいくつだ」
ドラゴがシドラの左腕のメーターを見ている。メーターは200のままだ。
「200だよ」
「シドラ。どうするんじゃ?」
グランドラがシドラのヘルメットを外して言った。
「なにを?」
シドラは興奮した目つきでグランドラにほほえんだ。
「出発のことじゃよ。出発は明日にした方がいい・・・」
グランドラは対流圏を見あげてそう言った。対流圏の光が陰りはじめている。
「わかったよ。出発は明日にするよ」
シドラはドラゴに助けてもらい、飛行装備を外しはじめた。
そのころ、対流圏の流れが少しずつ速度を増していた。だが停滞圏のシドラたちに、その変化はわからなかった。
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