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一 飛行人
カマロは大気圏外に近づき未確認飛行体を探った。飛行人はここから飛行したはずだ。
大気圏外の上で何かが動いた。それが何かは大気圏からはわからない。そう思っていると、ハァープゥーンビームがカマロを貫き、カマロは大気圏外へ引き揚げられていった。
ダイマは空から降りてきた何かに引かれて空へ消えた。不用意に光の中へ出たから、光に捕捉されてあっというまに空へ消えた。長官から注意されていたのに・・・。
長官から、「死ぬときは、ああ、いい人生だった」と言えと教えられた。そうすれば、そのときの意識がそのまま残り、よき世界へ行けるからだ。だけどダイマは光に捕捉されたとき、パニックになっていたはずだ。教えられたことなんか一つも憶えちゃいまい。
「それにしても、ヤツラは何だ?なあ、ファドラ、ヤツラは何だ?」
キーンの喚きを聞きながら、私は洞窟から大気圏に長く尾を引く航跡雲を見つめた。
「わからない。ヤツラを見たことがないんだ。ヤツラはほかの次元か、ほかの空間から俺たちを見ている気がする。そうでなくっちゃ、アイナが消えるはずがない。アイナはほかの次元に連れ去られたんだ。カマロやダイマとはちがう方法で連れ去られたんだ」
ファドラはアイナが住んでいた洞窟に目を凝らした。
「何のために?連れてゆかれて、アイナはどうなるんだ?」
「わからない。連れ去られてもどった者はいない。連れ去られた先に何があるのかわからない。クブウは新しい住居ごと捕獲されて消えた。オスターもシェリルもだ・・・」
そうこうしているあいだに、空中にシールドが張られ、ビームと衝撃波が洞窟を襲った。
ファドラたちはビームと衝撃波に住居の洞窟を追われ走って逃げた。たがいにぶつかりあい、張られたシールドに向って走り、シールドを避けてシールドにそって逃げた。しだいに、シールドの奥へ追い込まれてゆく。
行く先は先つぼみになったシールドだった。ファドラたちは逃れられなくなった。
このときになっても、ファドラたち浮遊人の前に、飛行人は姿を見せなかった。
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