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「な、何言ってんの。利用なんて出来ないよ。」
「男を忘れるには新しい恋とか言うし、ちょっとは意識して。俺なら今みたいな苦しい思い絶対させない」
和泉の事は大切だと思ってる。
だからお試しで付き合うとか、利用して付き合うとかそんなのしたくないのに。
和泉は私の気持ちなんて無視するように利用しろって言う。
「…和泉はダメだよ。絶対、傷付けたくない。」
「バカだな、今更だろ。何年あいつに片思いしてるお前見てたと思ってんだよ。それよりも、1回でも友達以上になれるチャンスがある方が嬉しい。」
1回でも友達以上になれるチャンス。
それが回ってきた時に嬉しい気持ちはよくわかる。
だけど…。
「返事、今じゃなくていいから考えてみて。もう気持ちもわかって貰えたし、遠慮しないから。」
そう言って笑う和泉に、私は笑い返せなかった。
こんなに優しい人が、どうして私なんかを好きになるんだろう。
何かの間違いじゃないのか。
いや、間違いであって欲しかったのかもしれない。
和泉とはずっと変わらないでいたかったから。
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