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「単刀直入に言います、中野を、絢を諦めてください。」
俺の言葉に表情が険しくなる。
多分俺が絢を好きなのはこいつにもバレてる。
もう隠す必要なんかない。
「…知ってたんだ、俺と絢の関係」
「まあ、知りたくなかったですけど。あの人と婚約している理由も全部聞きました。宝生さんから。」
「へー、紗綾が君に話したんだ。」
なんでもないことの様にそう声を漏らして壁に寄り掛かっている。
「同情はします、けど、結局婚約してる最中に他の女に手を出した最低野郎って事には変わりないんで。何か話聞いても俺には理解出来ないし、どうやってもあんたなんかに渡したくないですし。宣戦布告だけしとこうと思って。」
そう伝える俺に、新谷さんは可笑しそうに笑っている。
「は、何笑って…」
「いや、俺には眩しいくらいまっすぐだなって。きっと絢も、君といた方が幸せになれるんだろうね」
そう言って少し笑うと壁から背を離して、俺の方に寄ってくる。
そして肩にポンと手を置いて
「でもごめんね、俺も絢が好きだから離してあげられない。それに心配しなくてももう少しだから。今まで通り絢の事を影から見守っててよ」
影からを強く主張された気がする。
多分気のせいじゃない。
宣戦布告しに行った俺への、牽制だ。
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