1人が本棚に入れています
本棚に追加
何でも屋の身近に居る種族
※下ネタ出てきます
Q.貴方にとって身近な種族は何ですか?
そう尋ねられたら、貴方は何と答えるだろうか?
『人間』と答えるだろうか?
しかし、水無月光一はこう答えるのだ。
『鬼』、と。
平安時代、双子の兄弟が誕生した。
今となっては兄弟の本当の名は分からないが、双子は家が開発してきた禁術により鬼となった。
兄弟は鬼の本能を抑え込み、人間と共に生きる為に死に物狂いで足掻いた。
やがて、その兄弟を、『血を嗜好品として啜り、人の傍に寄り添う鬼・血啜り鬼』と呼ぶ様になった。
自身や他者の頭の中の想像を現実に引っ張り出して形にする『想像操作』もその兄弟の固有能力であった。
神の権能に匹敵する能力だが、限界はある。
その双子の兄弟の今の名は、『丒野璃燿』と『式嶌梨葉』という。
「ねー、想像操作で『延々と林檎が零れ落ちる壺』とか出してよ、梨葉先生」
「ふふ……残念ながら『実現出来ないもの』は出せないんですよ。食べ物関係は特にね。それに、想像の産物は私か兄上が死ねば消えてしまいますし、色々とルールを決めないと暫く経てば勝手に消えてしまいますし」
「……霧夜はどうやって鬼になったの?」
「彼は兄上への忠誠と恋心から兄上に頼んで血啜り鬼に変じたようですよ?」
式嶌梨葉。
この赤月町で三味線教室兼寺子屋の先生をしている『血啜り鬼』だ。
平安時代生まれの元人間であり、半陰陽である。
故に兄と共に選ばれてしまったのだ。『禁術』の実験台として。
血啜り鬼は西洋の鬼である吸血鬼の伝承の中にその存在を紛れ込ませる事で存在を隠してきた。
半陰陽であるが故に、家からは『出来損ない』と蔑まれ、禁術の実験台にされ、それでも諦めずに足掻いて生き続け、今に至ったのだ。
「......璃燿の会社の社員さんにも鬼がチラホラ居るけど、人間と一緒に暮らしたいって望んだからだよな、きっと」
光一がそう呟くと、梨葉は穏やかな笑みを浮かべて頷く。悪い人間ばかりでは無いことは、自分と兄も分かっている。1000年以上生きているが、まだまだ学ぶべき事は多い。
なら、歩みを止めずに進み続けよう。彼等と共に。
梨葉は心の中でそう呟いてから、兄の帰りを待った。
最初のコメントを投稿しよう!