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『丒野コーポレーション』。
この会社は社長自ら在宅ワークを行う事で、社員にも在宅仕事を選択可能にしたり、限りなくホワイト経営を心がけている。
そんな大企業の社長であるこの男、丒野璃燿は部下達の薦めもあり、1週間程有休を消化する事にした。
幸いにも自ら育てた社長代理は有能且つ優秀だ。何せ『100年程』一緒に居る部下なのだ。謀反を起こそうものなら即座に斬り捨てるのは言うまでもないが、『血の祝福』によって体内に入っている璃燿の血が裏切りを許さないだろう。
(......『社長は働きすぎなのでたまには休んでください』、か。良い人間の部下に恵まれた...今年の新人も順調に育っているし、今後も気を引き締めつつ励まんとな)
「人間の半陰陽とはかなり違うと思うがな...何せ血啜り鬼は謎の多い種族だ。吸血鬼の伝承に紛れ込んでいたせいか分かっていないことが山ほどある。そもそも半陰陽とはな...」
「やめて薙織哉さん......俺素人且つアホだから説明されても理解出来ない」
「......つまり璃燿と梨葉は男性半陰陽だが女性としての機能も持っている、ということだ。......想像操作による肉体操作で女性体になれる時点で察しろ、光一」
「おい何の話をしている」
家に入るや否や下の話(と璃燿は認識している)が出てきており、璃燿はため息を吐いた。
穏やかな笑みのまま首を傾げている弟を一瞥し、またため息を吐く。
「......何故止めない」
「ふふ、だって微笑ましいじゃないですか。それより早く手洗いとうがいと消毒を済ませてください、兄上」
下ネタ(にも見えなくは無い会話)が飛び交うこの光景を『微笑ましい』で済ませる弟に呆れつつ、弟に荷物を預けてから璃燿は洗面所へと向かう。
「......まあ、壊れてしまっているからかもしれんな、一度」
「闇が深そうなんで聞きたくない」
「......まあ、何れ話しますよ。何れ。まあ、言える事と言えば、私と兄上の本当の姓は丒野と式嶌のどちらでもないこと、その姓で呼ばれる事は私と兄上の逆鱗に触れる行為という事くらいですかね?」
黙々と夕飯の支度をする天馬を眺めつつ、梨葉は笑みを浮かべる。
「俺、薙織哉さん、天馬、璃燿、梨葉先生...後三人か」
「『あと五分で三人まとめて着く』と来てたぞ、メッセージが」
「アイツまさか運転中にメッセージ打ってねえよな!?」
「いや、剛のスマホから来てたから違う。『皐月君は運転中だから僕が代わりに打ってるよ』とのことだ」
三人は朝から夕方まで食材の仕入れに出掛けていた。
息抜きも兼ねていたのだろう。夕方までかかっていたのは咎めないでおこうと光一は心に決めた。
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