何でも屋の身近に居る種族

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そうして夕方になると、三人の男が光一の自宅に入ってきた。 一人目は黒のセミショートに深緑色の瞳をした、緑のパーカー姿に首からヘッドホンを下げた青年、風月剛(カゼツキ ツヨシ)だ。 スニーカーを脱いでから両手に荷物を抱えたまま台所へと入ると、天馬に『わ、ごめんね、狭い?』と詫びを入れてから買ったものを冷蔵庫または棚にしまっていく。 「ええい、剛が殆ど持って行ったから俺と皐月の持つ分がほぼ無いではないか......!!」 「いいんじゃねェの?『二人は交代で軽トラ運転してくれたんだしこれくらいはやらせて』って本人が言い出してんだからよ。甘えとこうぜ、霧夜」 二人目は同じく黒髪に右の前髪を少し長めに垂らした古代紫の瞳の青年、神宮皐月(ジングウサツキ)。ドロップショルダー気味のシャツを着ている為か、下に着ている黒のタンクトップの一部が出ている。剛のスニーカーを靴箱に入れてやると、皐月は少ない荷物を持って居間のソファーへと腰かける。 「...手も洗えないのか馬鹿共」 「ええい、細かいぞ美那神薙織哉!」 「煩いぞ。蓮条霧夜。デカい声を出す前に手を洗って来い。剛も荷物をしまってからでいいから洗って来い」 「光一が荷物しまってくれてるから今のうちに行ってくるよ、ごめんね薙織哉君......」 『潔癖か貴様は!!』と叫ぶ霧夜を見てため息を吐いてから一度ソファーに座った皐月が腰を上げて洗面所へと向かい、剛がその後を追う。 ...この声のデカい白髪に赤い右目の男は蓮条霧夜(レンジョウ キリヤ)。 璃燿の部下にして相棒である。 「ああ〜ミートソースの良い香り...」 「...鍋ごと持っていくから取り皿は任せた。」 「おかずのカプレーゼとスープの鍋は持っていく。」 「ついでに冷凍の鶏皮も茹でてポン酢かけて食っちまおうぜ。冷凍庫パンパンだろ」 「......洗い物増えるぅ......」 テーブルに並ぶ料理の数々。 濃厚なミートソースが絡んだ熱々のパスタ、モッツァレラとバジルにトマト、そしてオリーブオイルが口の中でマッチするカプレーゼ、魚の出汁が利いているマッシュルームとふんわり卵のスープ、そして一品だけ浮いた存在の鶏皮ポン酢。 「鶏皮ポン酢だけ浮いてんの草」 「提案者はお前じゃい!...あ、チーズかけていい?」 「かけるなら取り分けてからにしろ。唐揚げレモン論争の二の舞になるぞ」 ミートソースパスタを自分の取り皿によそいつつ、光一はポツリと呟く。 『...相変わらず此処には、純血の人間居ないなぁ』、と。 そう、この光一の自宅に住んでいる者は皆純血の人間ではない。 だが、それは光一にとっては些末な事であった。 『楽しいから別にいい』。 光一はそう心の中で呟いてから食事を再開した。 「で?何の話をしてたんだ?光一のアレがデカくて性欲も凄いって話かァ?」 「私と兄上の本来の身体の話をしてたんですよ」 「...お口にチャックしとくわ」 「おや、皐月くんにしては珍しいですね?」 「俺、口にチャック出来ない奴と思われてんの草」
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