11人が本棚に入れています
本棚に追加
「そういうわけじゃないけど……どうして?」
朝香は困惑していた。まだ花子と過ごしたのは一晩だけだが、花子はトイレは勿論、食事もしなければお風呂にも入らない。
睡眠も必要ないのだと昨日は朝香がベッドに入ってからも、ずっと朝香をニマニマしながら凝視していたことを思い出す。
「うふふ。トイレに行くのに理由って必要? あのトイレってアタシにとって家みたいなもんじゃない? いっつも人気がなくて、叫んでも誰にも聞こえないとこが気に入ってるの」
「あ、うん……」
(やっぱりちょっと気味が悪いけど……そのうち慣れるのかな)
朝香はずんずんと北校舎に向かっていく花子の後ろ姿を見ながら、小さくため息をはいた。
※※
花子と朝香は北校舎の四階に上がると突き当りの女子トイレに花子と入る。花子はトイレに入るとすぐに朝香を力づくで壁際に追いやった。
「わっ! ……花子ちゃん……何するのっ!」
「何するの~って?」
花子は不気味な笑みを浮かべると、朝香の顔の横に手のひらを突いた。
「ねぇ、アタシと朝香ちゃんは友達だよね」
その花子の低く怒りを含んだ声色に、朝香は顔をひきつらせた。
「ど、どうしたの……急に」
「約束したよね?」
「な……何を?」
「指切りしたじゃない……アタシと友達……って」
「そ、そうだよ。友達だよ」
花子は朝香の言葉に三日月の目を見開くと、朝香の細い首を両手でぐっと締めた。
最初のコメントを投稿しよう!