令和の口裂け女

1/6
前へ
/20ページ
次へ

令和の口裂け女

──とある放課後、体育館ではバスケ部の男子たちがクラブ活動に汗を流していた。 「二年は十分休憩ー、次一年、コート入って」 聞こえてきたバスケ部の部長の声に、二年生の雅紀(まさき)はタオル片手に体育館の端っこに腰を下ろした。 「あっつ」 夏休みもおわり九月だというのに今年はいつまでたっても暑い。雅紀はペットボトルの水をごくごくと喉を鳴らして飲む。 「お疲れ様」 「裕介(ゆうすけ)もおつかれ」 裕介は雅紀の隣に腰をおろすと、長めの前髪をタオルで拭きながら手に持っていたアクエリアスを飲み干した。 「生き返るー、って雅紀はまた水?」 「知ってんだろ、俺アクエリって味が変で苦手」 「それな。前も聞いたけどそんな変な味するかよ」 「するから言ってんの」 裕介が雅紀の返事に笑うと、何かを思い出したようにスマホを取りだした。 「おい裕介、クラブ中、スマホ禁止だろ」 「いや、さっきさー、クラブ前に小春(こはる)が送ってきたんだけどさ~これ見てよ」 「なに? 彼女自慢かよ」 「違うって」 苦笑しながら裕介が雅紀に向かってスマホの画面を向ける。 「ん? なんだこれ、令和の……口裂け女?」 「そう、なんか今年入った一年もさっきチラッと言っててさ。なんか一年の間で放課後、口裂け女が出るってウワサになってるらしい」
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加