第一章

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第一章

ー寒い。 隙間から入ってくる風に身をちぢこませながら、必死に耐える。ふと窓の外を見ると、雪が降り出していた。季節は冬。ここでの暮らしは今年で十年目だ。  私の両親は八歳の誕生日の日に事故で他界してしまった。  家族を失くした私を引き取ってくれたのが母方の弟の家だった。最初は彼らの気遣いに心癒されたこともあった。だけどそれは表向きの顔でしかなく、実際は私の力を無理やり使い、己の欲望のために生活する事しか考えていない人達だった。  私の能力は自分の血液を万能な薬に変える力と両親から引き継いだ、本の中に登録してある式神を自由に使うことができる力だ。  血の力の方は、まあ、利用されている。  二つも能力があるのを知られたら、何に利用されるのかしら。  でも、知られていないだけ幸いと思うべきか。 しばらくすると、下の階が騒がしくなってきた。  確か今日は集まりがあるんだっけ?  「お義姉ちゃん!外のお出迎えよろしくね~」 叔父さんの一人娘『佐々木あゆな』が部屋に入ってくる。  「お出迎え?私が?」  「そうよ!私は若様の相手で忙しいのだから他の人をよろしくね~」 あゆなの指示に従い表にでると、沢山の来客が訪れていた。 あゆなが私に押しつける理由がよくわかる。  「ねえ、そこの君!薔薇の間まで案内してくれないかな?」 門の前まで移動しようとして声をかけられた。振り返ると、大学生ぐらい男の人がいた。  「かしこまりました。すぐにご案内いたします」 由来は彼の前にたち、歩き出す。  「君はここの使用人なの」  「似ていますが、少し違います」  「そっか~」 えーと、次は確か右に曲がってそれから……  「夜神様!お越しでしたのね♪こちらにどうぞ!」 目を輝かせている。これはあゆなに任せて戻ろ。 彼をあゆなに任せて踵を返すと耳元で何かを言われる。  「ねえ、君の名前は有坂由来……次も会えるといいね(ボソッ)」  「っ!!!」 由来は思わず足を止め振り返る。 どうして、彼が私の名前を? 何ともいえない不安を胸に来客の出迎えと向かった。途中、庭園の前を通るとあゆなと婚約者の若様の声が聞こえてきた。  「若様~!今日のあゆなどうですか~?」  「とても可愛いよ。どこかの化け物よりずっとね」  「きゃー!ありがとうございますう~!」 化け物……確かにこの力は人を殺めることも救うこともできる。だから、制御を間違えないよう頑張っているけど、彼らには結局化け物にしかみえてなのにはかわりないらしい。  「それにしても~聞いてくださいよ~最近あの化け……」 不意に誰かが私の耳をふさぎ、声が聞こえなくなった。  「聞きたくないことにまで耳を貸す必要はないと思うけど?」 振り返ると、先ほど案内した男の人がいた。  「初めまして、俺は夜神渚。有坂由来さん俺と結婚してくれませんか?」 結婚?何を言ってるのこの人。  「化け物?」 私に気づいたのか、庭園から二人がこちらに近づいてくる。 どうしよう…… 若干パニック状態になっていると手を引かれる。  「この家があなたを苦しめているというのなら、攫っても犯罪にはなりませんよね?」 え?攫う?一体何を言って…… 彼が微笑んだ瞬間、凄まじい風が舞って、目を閉じる。風が収まり、ゆっくりと目を開けるとそこは見覚えのない屋敷の中だった。  
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